65.奴隷
次の日の朝、2匹の猫がレイに頼まれて何やら作っている。
傍らにいるマールは「本当に出来るかねえ。」と疑っているが、猫たちに「エル・キャット様にゃめんにゃよ。」と威嚇され、静かに見守ることにした。
レイとトムはマールに留守番を頼み、スミスの所に行く。
一緒に旅に出ようと誘う2人に、スミスは「分かった。」とだけ答えた。
そのまま村長の家まで行く。
レイとトムが2匹の猫とマール、スミスと共に旅に出ると聞いて村長は驚いていた。
「ここに住んでくれると思っとたんじゃがの。残念じゃい。」
マールのよろず屋は他の人に貸すが、4人と2匹がいつでも帰ってこられるよう、部屋は空けておくという。
2人は村長に感謝の言葉を述べた。
「それで。奴隷のことなんですが。」
レイが話を切り出す。
ロックが保護した者も面接したが、奴隷は全員、自分が奴隷であることを隠していた。
人として扱われることのない奴隷であることを、進んで申告する者はいない。
だがレイに見破られ、首の根元にある奴隷紋の有無も確認された。
従魔契約と同じように、奴隷の主となる者が奴隷紋に魔力を流し契約する。
奴隷を商人ギルドの出先機関で確認したところ、全員主人がいなかった。
このまま放免したところで、犯罪奴隷がまた罪を犯さないとも限らない。
村としてもその処遇に困っていた。
「なんじゃい。」
「このまま俺が契約して、旅に連れて行こうと思います。」
「ええのか。」
「はい。王都に戻るか旅に付いていくか選ばせますが。」
「う~ん。大変な旅になりそうじゃの。」
「旅する中で問題ないと判断したら、放免しようと思います。」
「そうかい。話すのは早い方が良いかの。」
「はい。」
奴隷たちは今、保管庫に分かれて住んでいる。王都の商人ギルドから何人か派遣され、行動を監視されていた。
商人ギルドも奴隷たちの処遇に困っており、国にお伺いを立てているが何の返事も無いらしい。現在は村が仮の主となっている。
「ちょっとええかの。」
「はい。」
村長が商人ギルドの職員に話しかける。
村長が事情を話すと、「そうですね。」と言いながら職員は考え込んだ。
「私一人では決められないので。王都のギルド長に聞いてみます。」
「頼む。」
馬車で王都まで行き、お伺いを立てるという。
レイは改めて奴隷たちを見た。老人や子供が多く、若い者もいるが四肢が欠損していたり、目が見えない者もいる。
「体のいい廃棄じゃて。」
村長が声を潜める。
奴隷商からすれば穀潰しが売れ、国王側からすれば安く贄を仕入れられたということだろう。
自分から言い出したことだが、レイは大変なことになったと思った。
一方その頃、マールと2匹の猫たちは、「出来た。出来た。」と喜んでいた。




