64.スミス
「スミス!」
レイとトムがスミスに駆け寄る。
防壁下の保管庫で2人の装備を修理していたスミスは、「来たか」という表情をして言った。
「あん?」
「あん、じゃねえよ。何でだよ。」
「お前、人の話聞いてねえな。俺は旅に出るんだよ。ここに住んでどうする。」
「エラ君もいますし。」
「エラは大丈夫だ。商売出来るぐれぇには鍛えてやった。俺はガキの頃から鍛冶やってんだ。少しくらい好きにさせてくれ。」
言いたいことを言うとスミスは作業に戻る。
レイとトムは顔を見合わせていたが、
「村出るときには言ってくれ。」
とスミスに伝えた。
「大丈夫だ。直ぐにじゃねえ。こんだけ直さなきゃいけないもんあるからよ。」
スミスが指さす保管庫の中を見ると、オーク戦でボロボロになった装備が山積みされていた。
2人は家に戻りながらこれからのことを話し合う。
「どうします?」
「俺は3人を追う。必ず見つけ出す。絶対生きてやがる。」
「旅に出るんですね。じゃ、自分もお供します。」
「へっ!マールさんどうする。」
「決着付けないと気が済まないんでしょ。今なら騎士団や王の目も無いでしょう。今です。」
レイは「そうか。」と呟いた。トムはあまり喋らないが、彼が一度決めたことをひっくり返すのは難しい。
「それに色んなとこ見てみたいっす。旨いもん食いたいし。」
トムは豪快に笑って、
「いつ出発します?」
「そうだな。スミスと話し合おう。一緒の方が心強いし。準備したいこともあるし。奴隷のことも考えがある。」
「そうですか。にゃんこたちは付いてきますかね。」
家に帰ってマールとタックとフクンに落ち着いたら旅に出ることを話した。
全員旅について行くという。
行きたいマールと行かせたくないトムが喧嘩を始め、最終的にマールが飛び蹴りで決着をつけた。




