62.移住希望
村に着いた後、取り敢えず昼食を食べて4人に休んでもらおうと木こり亭に向かう。
木こり亭は混雑していた。
やっと開いている席を見つけて6人で座ると、
「なんじゃあああい。帰ってきとったか。」
と白髪を逆立てておたまを持った村長が、エプロン姿で走ってきた。
アアナ亡き後、ノムと子供たちだけでは手が回らず、村人が交代で手伝っていた。
「昼飯食った後でいいからの。わしの家に来てくれ。」
早口で用件を伝えると、村長は調理場に戻っていった。
マールに戻ってきたことを伝え、猫たちにお土産の肉を渡す。
タックとフクンは寂しかったのか、にゃあにゃあ鳴きながらレイに抱っこをせがんだ。
6人と2匹は村長の家に向かう。既に村長は戻ってきており、傍らには息子のキッコンがいた。
「よう来てくれた。ここで村長しとりますキッコーリです。こっちは息子のキッコンね。そちらは?おう、スミスさんとリーツさんか。トモさん。リーツさんの奥様で。お若いのは。エラ君か。よろしくの~。」
まくし立てながら一気に自己紹介を終わらせていく。
キッコンが飲み物を出し終わると、レイは4人の移住を申し出た。
だが村長は難しい顔をしている。
そしてレイの方を向いて言った。
「実は相談したいことがあっての。住みたい奴が殺到してるのじゃ。」
「そうなんですか。」
「王都がひどい有様で。周辺の村や町に不安が広がっとる。ここは頑丈な防壁があるからの。王都で住む場所が無いやつや旅人やら冒険者やら。商人も何人か移住したいと言うとる。ロックたちが保護した連中もじゃ。」
キッコンが話を引き継ぐ。
「畑も人数分の食料が確保できる広さが欲しいので、受け入れに限りがあるんです。400人ほど受け入れは出来るんですが、なんせどのような人か分からなくて。悪人だったら悲惨ですし。村人を大切にしたいですし。軋轢を生むようなことは避けたいです。」
村長とキッコンが心配するのもわかる。今はオーク襲来の直後で皆大人しくしているが、安全だと分かったら、何か良からぬことをする奴も出てくるかもしれない。ロックが保護した中には犯罪奴隷もいる。
「レイさん。」
トムが小声で言う。
「レイさんのスキル、使えるんじゃ。」
「おっ。なんじゃい?」
村長がトムに聞き返した。




