61.行方不明
「行方不明。」
レイが驚いて聞き返す。
「オーク討伐の時でよ。教会から何も発表されてないがな。生きてるって言われてもいるが。」
勇者が死ぬと神託が下りギルガ教会から発表される。
教会から発表されていないため生きていると言われているが、前回勇者召喚の儀が執り行われたのは数百年前のため、本当に神託が下るのか分からず、死んでいるのではないかとも言われている。
まさか復讐相手が行方不明とは思わず、レイは黙り込んでしまった。
トムが心配そうに見ている。
レイはスミスとリーツ夫妻の顔をしばらく見ていたが、
「良ければ、キッコーリ村来ませんか。」
と提案した。
「何もねえ村だよな。」
スミスが驚く。
「今は頑丈な防壁に守られて立派な建物もあります。村長に頼めば大丈夫なはずです。」
3人の顔を交互に見ながら、
「こんなところで沈んでいるより良いと思います。明日発ちましょう。」
3人はしばらく考えていたが、決心がついたようだ。
スミスが頭を掻きながら、
「そうかもな。ちょっと待っててもらって良いか。」
そう言って外へ飛び出していった。
しばらくすると以前店番をしていた少年を連れてきた。
聞くと身寄りのない子供で、一緒に連れていきたいという。
一晩スミスの店で夜を明かし、お土産の肉を買って6人は馬車に乗った。
スミスの鍛冶道具も積んだため乗合馬車が使えず、1台馬車を借りて朝出発し、昼にキッコーリ村に着いた。
キッコーリ村では新たな問題が発生していた。




