59.異変
翌朝、レイとトムは王都に向けて走り出した。
マールにタックとフクンを預けたが、2匹がレイから離れることを嫌がったので、美味しいお肉を買って帰ると約束した。
オークの軍勢を倒しレベルが上がったおかげで早く移動できた2人は、昼前に王都にたどり着く。
門から入るとき、レイは異変に気が付いた。
「衛兵じゃないんだな。」
見ると商人らしき男と冒険者らしき女が、入場する人々のチェックをしている。
「衛兵の皆さんはどうしたんですか。」
トムが2人に聞くと、
「オークたちに襲われていなくなっちゃって。今は商人と冒険者のギルドで何とかやりくりしてるんですよ。」
疲れた顔をした男が答える。
王都で捕まって放り出されたレイとトムだが、冤罪だったからか、今王都が混乱しているからか、特に何事もなくすんなり入ることが出来た。
門は破壊されたが既に修復されており、城へと続く大通りの建物は何の被害も受けておらず、中には客がたくさん居て賑やかに商売している。
「城にいるはず。行くか。」
「はい。」
足早に城に向かい物陰から様子を伺うと、城門が閉じられ兵士が辺りを警戒していた。
「あいつ!」
珍しくトムが声を荒げる。
トムが指さした方向を見ると、あくびをしている兵士がいる。見覚えのある顔だ。
「俺たちが盗んだと言った奴か。」
「確かCランク冒険者でしたよね。何で兵士なんです?」
「知らんが、他にも知っている奴いるな。」
冒険者ギルドで朝から酒を飲んで新人冒険者に絡んでいた連中が、兵士の格好をして暇そうに立っている。
だが、うっかり城に近づこうとした人に槍を突き付けており、厳重な警戒をしていることが分かる。
「入るとしたら夜か。」
「そうですね。」
「それまで情報集めるか。」
「トモリーツ亭とスミスさんの所行きますか。様子確認したいですし。」
2人は広場の屋台で昼飯を食べ、連れ立ってトモリーツ亭へと向かった。
そこには原型を留めていないトモリーツ亭の残骸と、へたり込んですすり泣くリーツ夫妻がいた。




