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復讐者  作者: 安慶
森に埋もれた国
57/421

57.カミングアウト

 3日ほど作業を続けオークの死体を全て始末した後、門の鎖を新調してまた引き上げた。

借りた装備一式を商人たちに返しつつ、取り出した魔石を戦いに参加した避難者と商人、遺族たちそれぞれに分配していく。オークの皮は、なめしている最中だ。

門の脇には巨大なキングオークの頭があった。

始末しないのかと村長に聞いたら、討伐成功の証として国に献上するという。

「あんな国にか。あんな仕打ちを受けて。」

レイは文句を言うが、

「まあ。仕方ないて。一応国に忠誠があると見せんとな。処世術っちゅうやつよ。」

と村長がなだめた。

夜になり、風呂に入ってさっぱりした後、レイとトムは酒を持って防壁の歩廊へと登って行く。滞在している者は全員昼間の作業に疲れているのか、村はとても静かだ。

家の明かりも数えるほどしか灯っていない。

「終わりましたな。後悔しかありませんが。」

トムが酒をあおりながら言った。

マールとっておきのブドウ酒だ。何年ものだかの高級品でずっと隠されていたが、トムが引っ越しの時に見つけこっそり持ち出してきた。

マールに怒られないかと思いながら、レイも酒をごくりと飲んだ。芳醇な香りが鼻から喉を通っていく。星空を見ながらレイは言った。

「綺麗だな。星。」

「そうですか。いつでも見られますが。」

「前世ではそうではなかったよ。」

「そうなんですか。」

魔法もスキルもレベルも無いレイが生きていた世界は、どのようなところだろうとトムは思った。

静かな時が流れていく。

「召喚される前、前世のことだ。」

レイはおもむろに口を開いた。

「俺は女だった。」

トムの鼻から酒が出た。

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