55.逃走
ロックウッドの面々は、戦いの直後だというのに装備の汚れを落としていて、旅支度を既に終えていた。
「えっ。もう行くんですか。」
「ああ。」
「何で。」
ロックウッドのメンバーは黙ったままだ。
「まっ。大人の事情じゃ。」
建物の奥から、村長とセイクルズのメンバーが出てくる。
「事情。」
「王命に背いて、贄を逃したからの。咎人となるじゃろうて。この村で匿っていたら連帯責任になるしの。」
「人の命を救ったのにですか。」
「ああ。そうだ。後悔はない。」
ロックがキッパリと言う。
「手配書が出る前に、アッカディー王国に逃げたいのよ。じゃあね。」
ミナが力なく笑った。
「後のことは村長とセイクルズに任せてある。じゃあ行くぞ。」
「面倒くさいけどね~。」
戦いのときとはうってかわって、セインがけだるそうに言った。
「あっ。ほれ。報酬じゃ。少ないがの。」
村長がロックにお金がパンパンに詰まった袋を渡す。ロックは断ろうとしたが、「餞別じゃ。」と村長に押し付けられ、渋々受け取った。
ロックウッドのメンバーはオークの死体が積みあがる門から出ていこうとしたが、直前にロックが振り返った。表情は疲れていたが、はっきりとした口調で言った。
「レイ。お前はまだ強くなる。修行しろ。剣も魔法も。もう後悔したくないなら。」
5人は東に向けて走り出した。日が東の空から登り始めた。




