52.キングオーク
「皆、後少しだ!」
『おう!』
ロック・ゴザ・セイン・クルンの4人は、あと少しでキングオークに攻撃できる位置まで近づいていた。
先ほどまでジリジリと後退していたが、キングオークの攻撃が無差別でハイオークも倒されていること、西の方向から鬼神のごとく突き進むトムの攻撃により、オークたちの陣形が崩れ始めているからだ。
キングオークさえ倒すことが出来れば、指揮官を失ったオークたちは迷走する。
返り血を浴びながら、目の前のハイオークを切り刻んでいく。
もうあと一振りで攻撃が届く位置まで来た時、不意に目の前の視界が広くなった。
4人は一瞬何が起こったか分からず立ち止まったが、その次の瞬間、絶望した。
キングオークが消えたのだ。辺りを見るが姿が見えない。消えたと思い戸惑っていたが、西の方角からドンという重い音がしてそちらを見ると、トムの目の前にキングオークが立ちはだかっていた。
「まずい。」
ロックは呟いた。
トムは1人でハイオークを倒し続け、疲れが見え始めていた。もし体調が万全でもキングオークを倒すのは無理だろう。
トムに加勢しようと4人は向きを変えて近づこうとするが、大勢のハイオークが立ち塞がり、中々前に進まない。
トムの前まで一気に跳躍したキングオークはニヤニヤ笑いながら、持っていた棍棒をトムに振り下ろした。
ハルバードで受け止めたトムだったが、完全に力で押し負けている。
腕が震えていて腰の位置が低くなり、今にも膝が地面につきそうだ。
キングオークはハルバードから棍棒を引き剥がし、再びトムに振り下ろした。
死を覚悟し思わず目を瞑ったトムだったが、次の瞬間キングオークの絶叫を聞いて目を開く。
トムが見たのは、キングオークの脳天に剣を突き刺すレイの姿だった。




