50.数の暴力
遂にオークたちが門の前に到達した。
だが門前の深い堀に再び足を止める。
門を開いて堀の上を渡さないと村に入れない仕組みだ。
歩みが止まったオークたちに、魔法と矢が降り注ぎ、オークの死体がどんどん積みあがっていく。
すると後ろにいたオークたちは、死体を前に押し出し堀に落とし始めた。
ロックがつぶやく。
「死体で堀を埋めるつもりか。」
防壁周りは深い堀に囲まれているが、門前に重点的に死体を落としていく。
門を破るのが一番手っ取り早いと考えたようだ。
相手の思惑を感じ取ったロックがサクソウに合図し、門前の防壁に魔法使いと弓使いを集合させた。
ロックが指示を出す。
「堀が埋められる前に倒すぞ。」
集中的に門前のオークを倒していくが、その死体を掘りに落とされ埋められていく。
「もう限界~。あと頼んます~。」
気の抜けた声と共に、とうとう魔力が尽きたジョナが倒れこんだ。
剣士と見紛うほどの体格であるジョナを、戦闘を離脱した魔法使いや弓使いが重そうに支えながら、ゆっくりと下りていく。
「ゴザ。覚悟しろ。」
「分かった。」
普段は無口なゴザが声を張り上げる。
門の前に静かに立ち、ゴザは盾を構えた。
堀が完全に埋められ、オークが門に体当たりし始めた。
木の枠とレイの土魔法で作られた門は鈍い音を立てている。
体当たりしていたオークたちだったが、門にヒビすら入らないことが分かると、今度は隙間から門を引き剥がそうとし始めた。
レイはレシーアと共に1体でも多く倒そうと門外のオークたちに魔法を撃ち続けている。
トムよりもゴザよりもはるかに大きいハイオークが棍棒を持って迫りくる。
そのはるか後方に、ひときわ大きなオークが歩みを進めていた。キングオークだ。
レイとレシーアはキングオークに魔法を放つが、周りのオークたちが肉壁となり届かない。
壁外でほとんどのオークを屠ったが、100体近くいるハイオークはほとんど数を減らすことなく生き残っており、最後尾のキングオークに至っては無傷だ。
レイと共に魔法を撃ち続けていたレシーアが、とうとうへたり込んだ。
「ごめん…ね。頼むわ。」
駆け付けたサクソウと共に、レシーアは防壁を下りて行った。
ロックは防壁から攻撃していた全ての弓使いたちを下ろし、静かに剣を抜いてゴザの横に立つ。その横には同じくセインが剣を構えている。
サクソウと共に弓使いたちが村中心の建物の中に移動した。
ミナもサクソウに合流する。クルンはセインたちに並び立つ。
ロックたちが突破された場合、残った者は建物に籠城して、最後の戦いをすることになっている。
ロックが最後の号令を出す。
「門がもうすぐ突破される。気合入れろ!」
門を開閉する鎖がちぎれそうになっている。
全員が武器を握りしめて、1点を凝視している。
どのくらい時間が経っただろうか、とうとう鎖が引きちぎられ、オークたちが村内へとなだれ込んできた。




