49.オーク襲来
オークたちは魔法陣の起動を見てその歩みを止める。
ロックは大声を張り上げる。
「オークが来たぞ。準備しろ。」
魔法使いはいつでも魔法を放てるよう詠唱を始め、弓使いは矢をつがえ後方に控えている。
オークたちは魔法陣を避けようと横に広がったが、村を取り囲むように配置した魔法陣に貫かれ、前に進めなくなっていた。
「いいぞ。」
レイは犠牲を出さずに勝てるのではと気を緩めたが、ロックは険しい顔をしたままだ。
「甘いぞ、見ろ。」
見ると街道上の魔法陣にオークが殺到している。氷の刃に貫かれながらも、前に進もうとしている。オークが倒れると別のオークがそれを踏みつぶしながら前進を始めた。
魔法陣上の死体を踏み越えてオークの軍勢は近づいてくる。一定距離近づいたところでロックが次の号令を出した。
「魔法撃てーーーー。」
一斉に魔法がオークに向けられる。レイも広範囲の風魔法を使い、オークたちを屠っていく。
魔法使いたちは、腰に付けた袋から魔力ポーションを取り出し補給しながら魔法を放ち続ける。
突然、レイの隣にいた魔法使いが倒れた。魔力切れかとチラっと見ると、顔が血だらけになっている。
「窓から顔を出すな。石が投げられてる。」
ロックが再び大声を張り上げる。
オークたちが手にした石を窓に向かって投げ始めたのだ。
「ゴザ!下にいる奴、壁に張り付かせろ。」
門の後ろに控えていたゴザが、下にいた全員を防壁沿いに移動させた。
その直後、突然轟音が防壁内に鳴り響く。
防壁に張り付いていたトムが驚いて振り返ると、巨木が投げ込まれていた。
魔法が使えないオークたちが木や石を使って遠距離攻撃を始めたのだ。
遠距離攻撃の応酬が続く中、魔力切れの者が出始めていた。魔力ポーションが無くなった魔法使いたちは、戦闘不能になった者を担いで防壁を下りていく。
代わって弓使いが矢を放ち始めた。まだ魔力ポーションに余裕のあるレイ・レシーア・セイクルズの魔法使いジョナは、引き続き広範囲の魔法を撃ち続ける。
「弓は確実に一体ずつ倒していけ。」
矢でオークたちを倒していくが、魔法使いよりも窓から顔を出すことが多いため、投石の犠牲となる者が少なくなかった。
1人また1人と戦闘を離脱するものが増えていった。




