48.生きてまた会おう
ロックが戦闘に参加する者たちに細かく指示を出していく。
弓使いと魔法使いは防壁上に待機。接敵前、一定の距離まで縮まったら一斉に放つことになっている。魔法が使えるレイも参加する。
防壁下には回復魔法が使える者が控え、素早く回復をかけられるように準備している。少人数なので、重傷者を重点的に回復していく。
門は近接武器を持つ者と重戦士が警戒している。万が一、門が破られた場合侵入を食い止めるため、体を張る覚悟を決めている。
セインとゴザが、近接武器を持つ者たちを指揮する予定だ。トムとアアナも参加する。
門脇の上にはロックが全体の指揮を執るために居り、門と反対側の防壁には異変を素早く察知するためミナが控えている。ミナの隣にはセイクルズの女剣士クルンがいて警戒している。
村長をはじめとする非戦闘員は、地下室へと避難する。
配置が決まった後、全員で早めの夕食を食べた。喉を通らない者が多いが、無理やり水で流し込んでいく。
アアナは家族でご飯を食べている。「母ちゃん。」と心細くすがる子供たちにアアナは笑顔を向けた。
「あんたたち。心配するんじゃないよ。父ちゃんの言うことよく聞くんだよ。ほら泣かない。」
子供たちをぎゅっと抱きしめて、声をかけている。
夕食後それぞれが配置につくため移動する中、レイとトムは向き合った。レイはタックとフクンを抱っこしている。
夜の戦闘に備え点けられた明かりに、2人の顔が照らされた。
「じゃあ。生きて会おう。」
「はい。レイさんも。」
お互いもっと話をしたかったが、言葉が出てこなかった。
タックとフクンの頭を交互に撫でながら、レイは2匹に声をかけた。
「タック。フクン。魔法陣を起動させたら、地下室に行くんだよ。終わったら、美味しい肉食べようね。」
「約束にゃ。」
「絶対にゃ。」
タックとフクンはレイの手に頭をこすりつけながら返事をした。
2匹を抱えたまま、レイはキッコンと共に門脇の防壁上へと移動する。
ロックがレイを一瞥し、
「準備良いか。」
「ああ。」
「もう少しでオークどもが魔法陣に到達する。頼むぞ。」
迫りくる臭気と咆哮にタックとフクンは怯えていたが、目を瞑りながらも前足に魔力を込めていた。
ロックの「今だ。」の声を聞くと同時にカッと目を開き、
『アイススピア』
と叫ぶ。同時に魔法陣の上に到達していたオークたちは、突如出現した氷の刃に体を突き抜かれ絶命した。
「いいぞ。キッコン頼む。」
「はい。」
キッコンが2匹を抱きかかえ、素早く防壁を下りて地下室へと走っていった。
キッコンたちが地下室に入った後、トムがその扉を閉める。
「姿が見えてきたぞ、覚悟は良いか。」
「ああ。」
ロックとレイの視線の先には、おびただしい数のオークがいる。戦いが始まろうとしていた。




