44.村長の策パート2
2匹をおんぶしてアアナの近くに立っていたレイを村長は呼んだ。
「何です。」
「2匹は魔法が使えるが、戦えるのかの。」
「ううん。無理ですね。まだ子供ですし。」
先日の一件を隠し、レイは答えた。
「そうか。」
しばらく村長は考えた後、予想外のことを言った。
「じゃ、攻撃の魔法陣作れるか。」
「はい?たぶん作れますが。」
村長の脳裏には、ある日の昼下がりの光景が広がっていた。
レイが魔法陣を描き、風を巻き起こして木こり亭の子供たちと遊んでいた。
猫たちも魔法陣から水を巻き起こし、風と組み合わせてドラゴンの形を作っている。
子供たちは「すごい。すごい。」とはしゃいでおり、猫たちは「もっとすごいの作れるにゃ。」
と自慢げにヒゲを撫でていた。
「風魔法や氷魔法の魔法陣を村周辺に張り巡らせてほしい。」
村長は言う。
聞けば弓矢や魔法ポーションの数に限りがあり、もしオークの軍勢が来た時には村に到達する前に数を減らしたいという。
1人と2匹は一旦訓練を離れた弓使いの冒険者に同行してもらい、村から少し離れたところに魔法陣を描き始めた。
魔法や弓が届かないぎりぎりの所に村を取り囲むように描き、街道とその周辺は特に念入りに幾つもの魔法陣を描いていく。
「こんなんやっても村に来るとは限らんしなあ。」
同行していた弓使いが疑問を口にする。
確かに王都を目指しているオークの軍勢が、他に標的を変えるとは考えづらい。
「でも念には念を入れて。オークの残党がここを襲わないとも限らないしね。」
レイが答える。
村長としては出来る限りの策を講じて、犠牲者を出さないようにしたいのだ。
夕暮れになるまで魔法陣を描き、任務を終え、何人かの旅人を保護したロックウッド・セイクルズと合流して村に帰還した。
ロックから明日朝にオークの軍勢が王都に到達すると伝えられた。




