43.ポッタの覚悟
昼前に村長は村人と避難者を集め、オークの軍勢が王都を襲おうとしていること、またこの村も襲われる可能性があることを話した。
かなりの動揺が広がったが、今から安全に他の場所に避難できる保証はどこにもない。近くの村や町も襲われる可能性がある。堅牢な防壁に囲まれた村で警戒しようと村長が呼びかけ、それぞれが覚悟を決めた顔で頷いた。
村長は各人の戦闘経験や強さをもとに役割を決めていく。
①オークが討伐でき、装備一式を持っている者は討伐隊として集団での戦闘訓練を開始。2パーティーが帰ってくるまでは、Cランク冒険者とアアナが指導役。
②オークが討伐でき、装備一式を持っていない者は討伐予備隊として集団での戦闘訓練を開始。それぞれ得手の武器を模した木の棒で訓練する。Dランク冒険者とトムが指導役。
③戦えない村人は、避難者の受付と部屋の割り振りをする。その他炊き出しも行う。キッコンが指導役。
④戦えない避難者は弓矢の製作。弓使いのDランク冒険者から指導を受ける。
⑤その他子供たちは子守や畑仕事をする。木こり亭主人ノムが指導役。
役割を決め、それぞれがグループとして固まっていく。
事の重大さが分かるのか、小さな子供でさえ緊張の面持ちで村長の次の言葉を待っている。
村長はそれぞれの役割を伝えた後、重々しく口を開いた。
「それで、非常に図々しいお願いなんじゃが。商品の装備一式を貸してくれんか。無事に返せるとは限らんが。」
避難してきた商人たちに向けた言葉だ。
装備が無い故に、十分に戦えない者もいる。
商人たちが顔を見合わせて商品を出し渋っている中、ポッタが自分の馬車を率いて村長の傍まで来た。
何事かと皆が注目する中、幌をバッと開けたポッタが叫んだ。
「装備が無い皆さん。装備が十分でない皆さん。是非こちらからお持ちください。ポーションも十分あります。私は死にたくない。生きてればまた稼げる。ちょっとでも生きれる可能性があるなら、私はそれに賭ける。こんな所で死んでたまるか!」
最後は絶叫に近く、しんと辺りが静まりかえった。
そのうちに、1人また1人と自分の馬車を率いて商人たちが集まりだした。
「ありがたい。ありがたい。ポッタありがとう。皆生きよう。商人の皆さん、生き抜いて、後でお金のことで揉めましょう。」
村長は商人たちと握手し、キッコンたち村人は目録を作って誰に何の装備を貸すか割り振りをする。
ミナの見立てでは、オークの軍勢が王都に到達するまで、あと1日。




