27、たった一つの願い
ザムとジャミがレイを見つめる。
レイは女の子の目を真っすぐ見つめ返していた。
「願いって。」
「パパがね、女の子にしちゃってゴメンなさいって。お兄ちゃんのこともゴメンなさいって。だからなんか一つお願い聞くって。」
ジャミがゴクリと唾を飲み込む。
「何でも良いのか、本当に。」
「いいよ、パパだよ。何でも出来るし。」
レイは少し考えた後、一つの願いを伝えた。
ザムとジャミは少し驚き、女の子は不満そうだ。
「いいの?大丈夫?後悔しない?」
「後悔する!」
レイがキッパリ言うのでジャミがずっこける。
「レイ、あのさあ。」
「後悔するけど。」
レイは少し言葉を切り、また続けた。
「後悔するけど。たぶん創造神が思ってた方の願い言っても後悔すると思う。どっち選んでも後悔するんだったら、皆が幸せになる方が良い。」
「そうなんだ。」
女の子はお茶を少し飲んだ。
ロックたちは神の塔から外に出て、塔を見上げていた。
強烈な光と鐘の音で勝負が決したことが分かった。
そして先ほど塔内部の黒い板に、レイが次の神になるとの啓示が出た。
啓示が出てもレイたちは帰ってこない。
ロックたちの心配をよそに、トムはのんびりとタックたちと遊んでいる。
だが、トムはふと空を見上げるとロックに話しかけた。
「ロック、ミナのことだけど。」
「ああ。」
「出してくれないか。」
「ああ?」
「良いから早く。」
「何でだよ。」
「レイが奇跡を起こしてくれるよ。」
トムがニッコリと笑った。
神の塔の前に、ミナの遺体が横たわる。
巻かれていた布が取られ、軽鎧を身に着けたミナはまるで眠っているようだ。
レイが必死に回復魔法を遺体にかけたが、残った傷が痛々しい。
眠っているような顔は全く生気が無い。
そのミナを白く柔らかい光が包む。
どのくらいの時間が経ったのか、光が収まるとミナの顔には赤みがさしていた。
「ミナ!ミナ!」
レシーアがミナの側でうずくまった。
サクソウは必死に回復魔法をミナにかけ続け、ロックとゴザもミナの側に跪く。
ミナの顔に赤みがさし、側にいると呼吸が聞こえてくる。
「ミナ!」
「っうるさいなあ。ロック寝ぼけてんの?」
ミナはロックを叩きながら起き上がった。




