25、代理神
レイは神をやってくれと頼まれた。
あまりの頼みに固まるレイに女の子は話を続ける。
「理由話すね。ほんとはね、お兄ちゃんはあと100年は神でいるはずだったんだ。でも負けちゃったでしょ。で、あたし来たでしょ。あたし修行中だったの。まだ神になるの早いの。だからあたしがなるまでの間、代わりにやってくんない?」
「…断ると言ったら。」
「断れないよ。それだけのことしたんだもん。」
「神を殴ったことか。」
「そんなことじゃないよ。人間殺したでしょ。魔物殺したでしょ。その業は一生背負っていかなきゃって言ってなかった?」
「罪滅ぼしでやれってか。」
「だね。神不在で、今すっごく世界が不安定なんだよ。信仰もなくなっちゃうし。みんな不安になるでしょ。」
「創造神とやらが代わりにやれば。」
「そんな暇パパにない。お兄ちゃん怒らなきゃだし。他にも面倒みなきゃいけないし。」
「俺が代わりでやって良いのか。」
「いいんだよ。パパが言ってたもん。あたしも手伝うし。もう下の人たちに知らせちゃったし。」
「ロックたちにか。止めろよ、マジで、おい。」
「言ったでしょ。レイ君は断れないんだよ。」
どうやら拒否権は無いらしい。
レイが考え込んで黙っていると、女の子はザムに向かって言った。
「ザム君だっけ。君もレイ君を手伝うんだよ。」
「無論だ。」
「スキル使って。」
「…。」
「今なら分かるでしょ。邪魔だったお兄ちゃんいなくなったし。」
「『ミラー』は確かに。」
「違うよ。もう1個のスキルの方だよ。」
女の子がテーブルに手を置くとお茶やお菓子が消え、代わりに大きな地図が出てきた。
この大陸の地図らしい。
「ああ~お菓子があ。」
口いっぱいにお菓子を頬張っていたジャミが嘆いている。
ザムは地図をしばらく眺めていたが、手をそっと地図の上に置いた。




