22、嘘から出たまこと
ジャミは全身が痺れるように感じた。
全く発動しなかったスキル。
石がパンにならなかったスキル。
まさに今ここで使わなければならない。
ぶっつけ本番だ。
「レイ!」
ジャミは叫んだ。
相変わらずレイは絶叫している。
「レイ!そんな奴の言うこと信じるな。」
レイは無反応だが、ジャミは諦めない。
「レイ!トムがいないなんて嘘だ!下でロックたちと待ってる。階段上れたのは俺たち3人だけだったろ。忘れたか。」
呆れた目で神がジャミを見ているが、そんなことは気にしない。
ザムもとうとうジャミまで気が狂ったのかと憐みの目で見ていたが、ジャミの体がわずかに揺らいでいるのを見て気が付いたようだ。
「そうだぞ、レイ!勝ったら美味い酒飲もうって約束忘れたのか。」
ザムが加勢する。
「マールさんの酒!マールさんのとっておきの酒!勝ったら4人で飲もうって。1本残ってるからって!皆で約束したろ。」
ジャミの体の揺らぎが大きくなるのを見て、神も気が付いたようだ。
「こいつっ。」
神がジャミに殴りかかった。
レイの心の中に一滴の雫が落ちてきた。
濁流の中に、黒く濁り荒れ狂う心の中に、清らかな一滴。
その雫が落ちた時、レイの中に光が差し込み、荒れ狂う心が次第に穏やかになるのを感じた。
「レイ…。」
ロックが心配そうに神の塔を見つめている。
レイたちが上り始めてから丸1日が過ぎた。
塔内部に掲げられている黒い板に、何の啓示も浮かんでこない。
「大丈夫、レイたちはきっとやってくれる。」
レシーアが自分に言い聞かせるように呟いた。
ロックウッドの面々が神の塔を見上げる中、後ろから近づいてくる男がいた。
大ぶりの斧を担ぐ大男。
赤毛で優しい目をしている。
「ロックさん。」
「ああ、トム。まだ動きはない。」
「そうっすか。」
「心配するな。レイたちはきっと勝つ。」
「心配してないっすよ。トイレとか食いもんとか大丈夫かなって思ってただけっす。」
「そこかよ、心配どころ。」
ロックたちと一緒に、トムも神の塔を見上げていた。
「こいつっ。」
神がジャミを殴り、ジャミが吹っ飛ばされた。
神は2発目を食らわせようとジャミに近づく。
だが、神がジャミを殴ることは二度と無かった。
ジャミを殴ろうとした神は床に叩きつけられ、白目をむく。
「お前だけは…お前だけは許さん。」
怒りで拳を震わせたレイが、神の前に立ちはだかった。




