21、2匹の黒猫
頭がボーっとする。
神の領域、高所で戦っているから無理もない。
レイは気が狂い、戦意を完全に失った。
声にならない声で叫びながら天を仰いでいる。
ザムとジャミは戦おうとしているが、攻撃は通じず逃げるばかりだ。
神は拾ったオリハルコンの破片を手に、ザムとジャミに攻撃を仕掛けている。
2人のレベルは高く、まともな装備も戦闘技術も身に着けていない神の攻撃は避けられるはずだった。
だが高所で動くのはかなり疲れる。
少しずつ攻撃が当たりはじめ、体に傷が付いていく。
ボーっとした中でジャミの脳裏に色々なことが浮かんできた。
ああこれが死ぬ直前に見るという人生の出来事かと、そんなくだらないことを考えている。
ふとある光景が見えてきた。
2匹の黒猫が目の前で遊んでいる。
レイが最も気にかけていた2匹。
戦いのたびに「俺に何かあったら。」と託された2匹。
魔法は得意だが、戦いは苦手だった黒猫たち。
「いるにゃ!」
突然タックが叫んだ。
「えっ何。」
ジャミは戸惑う。
「だからいるにゃ!」
「見えてないにゃんて仕方ないにゃあ。」
フクンも頷いている。
「いないよ。」
ジャミは悲しそうに言った。
レイだけではなくタックとフクンも同じ幻か何かを見ているのだろうと。
「違うにゃあ。見えてないだけにゃあ。」
フクンが悲しそうに言う。
ジャミがオロオロしていると、タックが突然猫パンチをしてきた。
爪が出ていてかなり痛い。
「痛ったあ。」
額を押さえるジャミに、タックとフクンは相変わらずにゃあにゃあ何か言っている。
戸惑うジャミの耳に、はっきりとした低い男の声が聞こえた。
「お前のスキルは何だ。」




