41.ミナを探して
「ミナだったら大丈夫よ。相手がキングオーガでも後れは取らないわ。」
レシーアが言う。
「それは分かってる。」
ミナの実力であれば、キングオークから逃げ切ることも可能だ。
「なあ、もうあと3時間ほどで日が暮れるが、ミナ探しに行かないか。」
ロックがミナの捜索を提案する。
「そうですね。」
「仕方ねえな。」
ロックウッドの面々が同意する。
「一旦王都行くか。」
「そうね。」
4人は日暮れ後でも戦闘が出来るよう準備を始めた。
「皆さん、どうしました。」
レイに渡そうと魔力ポーションを手にしたトムが近づいてきた。
「ちょっと仲間を探しに。」
「外行くんすか。何か必要なものは。」
「ない。」
「そうですか。お気をつけて。」
「ああ。」
手早く準備を終えると外に勢いよく飛び出していく。
サクソウがバフをかけ、4人は走り出した。
歩くと5時間かかる道のりを3時間ほどで王都にたどり着いた4人は、大勢の粗末な服を着た人々と、彼らを前にへたり込むミナを見つけた。
夕闇が迫る中、ロックはミナに走り寄る。
「どうした。」
「ひどいよ。こんなの…。」
半泣きのミナが4人に話し始めた。
聞くと王国軍がオーク村の殲滅に失敗し、敗走。その報復かキングオーク率いる軍勢が、勢力を拡大しながら王都に向かっているという。
「で、この人たちは。」
「で。でね。この人たちは、オークに食べさせるんだって。」
『…。』
全員無言だった。ミナ曰く奴隷や貧民をオークに食べさせ満腹にさせれば王都は襲われないのではという国王の命令で、皆縛られて立たされているという。
「逃げられないのか。」
「あそこ見て。」
見ると監視塔の上から衛兵が弓で狙っている。
「どうするか。」
ロックは思案した。オークに贄を差し出したとして、王都が襲われない保証はない。
奴隷たちを助けるにしても衛兵が邪魔だ。
「夜を待ちましょう。」
レシーアが静かに言った。
「こんなの耐えられないわ。見捨てておけない。」
見ると拳を握りしめている。
レシーアは貧民の出だ。魔法が使えるため冒険者となり貧困から抜け出したが、もし使えなければ貧民のままか良くて娼婦だっただろう。
「やれやれ。やりましょうか。」
「仕方ねえな。」
5人の意思は固まった。
奴隷たちを放り出すために門を開けたのか、前日貼りだしていた紙がはぎ取られていたため、袋から紙を取り出し前回と同じ内容を書き記して門に貼り付けた。
「ミナ。」
小声でロックが話しかける。
「うん。」
「衛兵に見られないように縛り解けるか。」
「やる。」
「夜になったら一気にやるぞ。」
そしてロックは小声で1人1人に声をかけていく。
これからやろうとしていることは王命に背く行為だ。失敗は許されない。
全員でキッコーリ村への移動を成功させるために、これからやるべきことを伝えていく。
闇がすぐそこまで迫っていた。




