15、トイレ・トイレ・トイレ!
重たい荷物を背負っているため、階段を上るスピードが明らかに遅くなっている。
時々ふらついて足を踏み外しそうになる。
もしそうなったら、中央の吹き抜けから下に落ちて無事では済まないだろう。
「あとどれくらいで着くのかな。」
ジャミが塔を見上げながら呟いた。
「考えるな。ただ足を動かせば良い。」
レイは考えるのを止めたようだ。
上るにつれ空気が薄くなるのか息が苦しくなる。
それだけではない。
階段の幅が明らかに狭くなっている。
下の方では2人並んでも余裕だったのだが、今は1人がやっと通れるくらいの幅しかない。
足を踏み外せば真っ逆さまなので、緊張感が半端ない。
「あの…言いにくいんだけど…おしっこ…。」
ジャミの言葉に全員立ち止まる。
階段上りは体力を使う。
汗もかくので自然と水を飲む量も増えていく。
3時間に1回くらいの頻度で休憩を入れるのだが、その度にトイレに行きたくなった。
「我慢出来ないか。」
「無理っす。」
ジャミは額に脂汗をかいている。
エラ特製の簡易トイレはあるのだが、出すものを出すと重くなるし、何より使用回数に制限がある。
出来る限り使いたくなかったが仕方が無い。
最後尾にいたトムがその場にトイレを設置する。
トムが用を足してザムに渡し、ザムが用を足してレイに渡し、レイが用を足してジャミに渡し、最後にジャミが用を足す。
囲いをしたり、特定の場所に設置して交互に行ければ良いのだが、狭い階段ではそうすることも出来ない。
他人の用を足す姿を見ないようにしながら、終わったら慎重に次の人に渡していくしかない。
「あとどれくらい使える?」
「もってあと1回だな。」
「…。」
足を踏み外す以上の緊張感がレイたちに走る。
もし簡易トイレが満杯になれば、そこら辺に用を足すしかない。
いくら敵とはいえ、神の住まう場所でそれをして良いのか迷う。
「頼む。もうそろそろ着いてくれ。」
祈りながら上るレイたちの目の前に、ぽっかりと青黒く透明な丸が見えた。
目を凝らすと、空の一部なのか少し雲が浮かんでいる。
「みんな!ゴールだ!神の所まで来たぞ!」
レイたちが一列になって階段を上りきると、ぽっかりと空いた穴の先に広い空間が広がっていた。
1人の人間らしきものがその中央に座っている。
「お前が神か!ちょっと待て!」
レイは近づこうとするザムを慌てて制止する。
「トイレはあるのか!そうか無いのか。」
レイはカバンから簡易トイレを取り出した。
「トイレ終わるまで待ってろ!」
神らしき人間にそう宣言すると、レイはいそいそとトイレを設置し始めた。
神らしき人間は、
「終わった後、手え洗ってよね。」
と呟いた。




