14、神へと続く階段
レイたちは走りながら上っている。
最初は一段一段踏みしめていたのだが、あまりに段数が多いため苛つき始め、階段を3段飛ばしで上り走っている。
レベル100を優に超える4人には苦も無い。
だが足を踏み外そうものなら、下に真っ逆さまに落ちてしまう。
中央の吹き抜け部分からチルたちの歓声が聞こえなくなり、下が闇に覆われ、上もゴールが見えない闇に覆われている。
「ゴールが見えないってキツイな。」
「そうだな。今どれくらいか。」
「声も聞こえなくなっちゃったしね。」
窓があればまだ良いのだが、そんなものは無く、所々にある灯を頼りに上っていく。
青白く揺らめく灯は、スミスが持っていた神の灯に似ている。
「どこかで休むか。」
「だな。疲れたら早めにしよう。」
日の位置が分からないから、正確な時間も分からない。
トムの息が少し上がった所で、4人は壁に背を付け座って休むことにした。
「なあ。今まで上った奴いるのかな。」
「サクソウに聞けば良かったな。」
あらゆる本を読むサクソウなら何か情報があったかもしれない。
主にレイとジャミが喋る中、ザムは目を瞑って黙ったままだ。
トムは魔法袋を漁っている。
「ねえ、レイ。」
「おう。」
「トイレ…ってどうすんの?」
「おわっ。一応簡易で使えるトイレが魔法袋の中にあるはずだ。」
それを考えていなかった。
これは現実で、物語のようにサクサク事が進むことが無い。
あとどれくらいで神のもとに着くのか分からない今、食事とトイレは確かに現実的な問題だった。
昨日広場で野宿したときも、侵攻したレイたちが塔内のトイレを借りるなど、少し間抜けな状況になっていた。
「レイさん。」
「どうした、トム。」
「通信袋使えないっす。」
「何?」
レイが通信袋に魔力を流す。
ザザッという音は聞こえるが、呼び掛けても何の返事も聞こえてこない。
「レイさん。」
「今度は何だ、トム。」
「魔法袋も使えなくなりそうです。」
「何?」
レイが魔法袋に魔力を流す。
何とか食料を引っ張り出したが、予備の装備やポーションなど、いくつか取り出せなくなっている。
「魔力が使えなくなるのか。」
「徐々にな。」
静かだったザムが目を開いた。
「どうする。」
「行こう。」
「でも。」
「食料は取り出せたんだ。ここで必要なものだけ取り出してカバンに詰めよう。出直すにしても同じことだ。」
確かにザムの言う通り、出直しても状況は変わらない。
レイたちはカバンに食料や水を移し替え、それぞれ背負って階段を上ることになった。




