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復讐者  作者: 安慶
最後に望むもの
402/421

10、一番弟子

「ジャイル!」

レイたちがジャイルに駆け寄る。

レイが素早く回復魔法をかけ、ジャイルが立ちあがった。

再び剣を握りしめ、聖騎士に立ち向かおうとしている。

「問題ない。」

「んなわけないだろ。」

 レイの回復魔法で傷は治ったが、鎧がボロボロだ。

次戦えば、確実に命は無いだろう。

「無理すんな。俺たちで戦う。」

「止めとけ。あれは他とは違う。」

 ジャイルが顎をしゃくり、聖騎士を見るように促す。

聖騎士は静かに神の塔を守るように立っていた。

身に着けている鎧には傷ひとつ付いていない。

確かに他の聖騎士よりも、圧があるように見える。

「ザム、あいつが一番強いのか。」

「だな。ジャイルが言う通り、他と違う。」

「全力で行くか。」

「ああ。」

ジャイルは代わりの鎧を身に着けようと、魔法袋を漁っている。

時間はかけられないと、ジャイルを除く5人が武器を手に聖騎士に近づいていく。

 最初に仕掛けたのはザムだ。

腕を内側に寄せ、魔剣を左肩目掛けて振り下ろす。

聖騎士は小さな盾で軽々と攻撃を弾くと、がら空きになっているザムの右わき腹目掛けて剣を一文字に裂いた。

ゴオンという鈍い音が周囲に鳴り響く。

ゴザが素早く盾で聖騎士の攻撃を防ぎ、踏み込んで相手の態勢を崩そうとした。

 聖騎士は軽やかなステップでゴザの攻撃を受け流すと、腰を捻り斜め下からザムの太ももを切りつける。

一瞬何が起こったのかと動きが止まったザムを、次の瞬間猛烈な痛みが襲った。

「ガフっ。」

体をくの字に曲げ、斬られた太ももを押さえる。

 聖騎士が手首を切り返しザムの首を撥ねようとした瞬間、ロックの剣が弾いた。

「痛ってえ。」

剣を剣で押さえただけで、全身の骨が砕けるような痛みが襲う。

レイもザムを回復した後、剣を聖騎士の背後から切りつける。

「ぐっ。」

手首を押さえたレイが後退する。

レイ渾身の一撃は、聖騎士の鎧に傷ひとつ付けていない。

むしろレイの手首が折れそうになったくらいだ。

「エリアヒール!」

サクソウが後方から回復魔法をかける。

「レイ、力を入れすぎるな。力任せの攻撃は通じない!」

アダマンタイト製の鎧を身に着けたジャイルが、再び参戦する。

サクソウの隣では、ザムが別の鎧を引っ張り出していた。

「それでは、参る。」

 ジャイルが飛び出し、再び聖騎士の前に立ちはだかる。

ジャイルが剣を振った…ようだが、あまりに速すぎて空気を斬る音しか聞こえてこない。

「うっ。」

「引きましょう。」

 ジャイルと聖騎士の戦いに付いて行けないロックとゴザが後退する。

レイも参戦しようとしたが、全く攻撃が見えない。

トムも悔しそうにジャイルたちから距離を取った。

「何すか、あれ。」

トムが目を見開いている。

「分からん。ジャイルの言う通り、俺たちでは無理かもしれん。」

今、ジャイルと肩を並べて戦うのは無理だ。

レイたちは見守るしか無かった。

 長い長い時間が経ったように思えたが、実は5分くらいだったように思う。

剣が弾き飛ばされ、ジャイルが無様に尻もちをついた。

 聖騎士はジャイルに剣を突き付けながら、静かに言った。

「我、剣聖アトラント様の一番弟子である。敵ながら見事な戦いであった。最後は苦しまず逝かせてやろう。」

「うわあ、しゃべった。」

 いつの間にかレイの隣にジャミがいる。

「では。」

ジャイルの首めがけて剣が振りわれたが、ジャイルの首が飛ぶことは無かった。

「間に合って良かった。」

黒い炎の魔剣を持ち、聖騎士の前に立ちはだかったのは、剣聖アトラントだった。


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