9、白い炎
レイたちの戦況は悪くなる一方に思えた。
だがそれを打ち破ったのは、誰でもないザムだ。
ザムは白い炎が出る魔剣を右手に持ち、左手にはオリハルコン製のショートソードを持っている。
ショートソードを聖騎士の胸に突き立て、魔剣で首を一気に撥ねた。
聖騎士の首が胴体から切り離され、地面に落ちる。
鎧の至る所に穴が開き、血が見えている部分もあった。
ザムは後ろに飛び退き、他の聖騎士から距離を取ると腰の魔法袋からポーションを取り出して飲んだ。
そして苦戦しているロックとゴザの戦いに加わる。
「おい!無理すんなよ!」
「大丈夫だ。問題ない。」
ザムが右から、ロックが左から聖騎士を攻撃する。
ゴザは聖騎士の正面に立ち、ロックたちへの攻撃を防いでいた。
1人加わったことで聖騎士が押され始めた。
ロックたちと戦う聖騎士も右手に剣を持ち、左腕に小さな盾をくくりつけている。
ザムはショートソードで絶え間なく攻撃を加えながら、魔剣で相手のわき腹の一ヶ所を執拗に攻撃する。
3方向からくる攻撃に耐えられなくなったのか、聖騎士がザムの魔剣を弾き損ねた。
ザムの魔剣から出た白い炎が、聖騎士の鎧を焼く。
聖騎士がザムの魔剣を大きく弾いたが、その一瞬をゴザは見逃さなかった。
盾の後ろに隠していた剣を、ザムが焼いた部分に押し込む。
相手の動きが完全に止まったのを見て、ロックが聖騎士の首を一気に撥ねた。
聖騎士の首が胴体から切り離され、地面に落ちる。
聖騎士の首の断面を見たロックは息を飲んだ。
そしてザムの顔を見るが、ザムは首を横に振りレイたちを助けようと走り出す。
レイたちと戦っていた聖騎士は、レイとトムを圧倒していたが、ザムたちが助っ人に加わり5人に囲まれた、なすすべなくレイに倒され地面に伏した。
ロックと同様に聖騎士の死体を見たレイは、驚いた表情でザムを見る。
ザムは頷いて言った。
「まあ、予想はしていた。まだ終わっちゃいない。行くぞ。」
「ああ。考えまとめんのは後で良いしな。
レイたちがジャイルの助太刀に行こうとしたその時、ジャイルの体がはるか後方に弾き飛ばされ、壁に激突した。




