40.建築
翌朝、防壁を作る際に余った材料が村の中心に集められた。
「人間よ、あれを作るのにゃ!」
「イエッイエッサー!」
レイがタックに敬礼しながら返事し、再び土で人形を作っている。出来上がった人形に、
「ドール。」
と呟くと、ムクムクと人形が大きくなり立ち上がった。
「ふぁ。」
Eランク冒険者だと侮っていたロックウッドの面々は驚きを隠せなかった。
こんな魔法を使えるのは少なくともBランク以上である。
「レシーア。これ出来るか。」
「いえ。こんなの無理。繊細な魔力操作が必要よ。」
Aランクの魔法使いでも出来ないという。
固唾をのんで見守っていると、タックとフクンもそれぞれ人形を作りだし、3体が同時に作業を始めた。
土台を石で作り、その上に木を組み立てていく。
出来上がった木枠を基に土魔法で壁と屋根を作っていった。
村の中心に大きな円状の建物が出来上がっていく。3階建てで屋根の上に緑の草が乗っている。3日で食べられるようになる栄養豊富な三日菜だ。地下室もあり、外側には宿屋等の店の入り口がある。巨大な円形の建物の4方向に切り込みのように道があり奥に続いている。奥へ行くと中庭があり、そこから建物の中に入れる仕様になっている。窓とドアを付ける枠を残して、1日で全て完成した。
「なんだよ。この早さ。」
ロックウッドの4人は口をあんぐりと開けている。
村人たちはこの光景に慣れているのか、ドアや窓の取り付け作業を既に始めていた。
窓はガラスが高級かつ村に在庫が無いため、木のよろい戸だけがはめられているが、ゆくゆくはガラスをはめる予定だという。
平凡な村で粗末な小屋に住んでいた村人たちは、どこに住むかワイワイと話し合いながら自分たちの荷物を持って建物の中に入っていく。40人ほどの村人が自分たちの住居を決めた後、村長は呆然としている商人や旅人たちを見ながら言った。
「それでは、この建物の中にしばらく滞在していただきたい。名前・職業・今住んでいる所をキッコンとレイに伝えてください。台帳を作り部屋を割り振ります。食事・ベッドが必要な方は宿にどうぞ。1泊1000Gになりまする。」
にこやかにそう言うと、
「わしの家はそこにする~。」と言いながら、建物の中に入っていった。
マールはしばらく様子を見ていたがため息をついて、
「やれやれ。トム。荷物をあそこに置いといてくれ。」
「分かった。」
大量の商品と荷物を台車に乗せ、トムは新しいよろず屋に向かった。
何往復かしなければならないが、今日中に引っ越しが完了しそうだ。
強固な建物が完成し、キッコーリ村は要塞都市のようになった。
「ねえ。凄くない?」
レシーアが呆れたように言う。
「凄いな。」
「うん。」
他のメンバーもうなずく。
レシーアがロックの方を振り向くと、
「遅いな。」
ロックは未だ帰ってこないミナの身を案じていた。




