7、4人の聖騎士
「何だ。4人しかいないじゃん。」
セインは気の抜けたような声を出した。
レイとジャミは警戒したままだ。
ザムもセインと同じように気が抜けていたのだが、4人の聖騎士を見て警戒を始めた。
レイの隣で剣を抜いて静かに立っている。
「どれくらいだ。」
「俺の親父と同じか、それ以上。」
背中が凍り付くような感覚に陥る。
初めて魔族を見た時と同じような威圧感を感じる。
魔族と違うのは、4人の聖騎士から殺気が全く感じられないことだ。
どのタイミングで切りつけるか、一歩を踏み出そうとするが、レイの足は全く動かない。
相手の威圧に、直ぐにでも回れ右をして逃げ出したくなる。
いたずらに時間だけが過ぎていく中、レイたちが来た道とは別の道から、レイの奴隷たちを引き連れたロックウッドと、アッカディー兵を引き連れたジャイルがやって来た。
ロックとジャイルは静かにレイの側まで移動すると、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「何だ、あいつら。」
ロックがそう言うのも無理はない。
レイたちが身に着ける動きを阻害しないようにスミスが作った鎧とは異なり、騎士団の身に着ける鎧は顔までオリハルコンに覆われている。
それだけではない。
継ぎ目が一切なく、どのようにして動くのか分からない代物だ。
「あれが神聖騎士団か。」
自分の師匠がかつて団長を務めていた4人を見て、ジャイルが呟いた。
「ジャイルは見たこと無いのか。」
「無いな。砦や教会を警備している神聖騎士団は見たことあるが、あの4人は初めてだ。」
「人間か。」
「分からん。だが勝たなきゃ神の塔には行けないな。」
4人は神の塔に入る扉を守るようにして立っている。
全員倒さないと中に入れないようだ。
「セイン。」
「何だ。」
「冒険者たちと少し離れていてくれ。出来れば通りまで下がってくれると有難い。」
「分かった。」
セインは不満げな冒険者たちを引き連れて、元来た道の所まで戻る。
セインたちの装備はアダマンタイト製だし、冒険者に至ってはミスリル製だ。
オリハルコンの装備相手ではかなり分が悪い。
「ジャミ。」
「何?」
レイはスミスから渡された白い包みをジャミに渡した。
「これを頼む。」
「うい。」
ジャミはどこかへと走り出した。
レイはチラっと横目でロックを見た。
「複数人で斬りかかって倒せるか。」
「いや。無理だろう。ちょっとでも連携悪けりゃ死ぬ。」
恐らくロックの見立ては正しいだろう。
そうすると、1対1、あるいは2人がかりで戦うことになる。
「装備と実力で言うと、俺とゴザ、レイ、ジャイル、ザムか。」
「あと、トムだな。」
「…悪りい。そうだな。緊張してた。」
レイはトムと2人で1人の聖騎士を倒すことになる。
ロックはゴザと。
ザムとジャイルは完全に1対1だ。
「皆準備は良いか。」
「ああ。」
6人は武器を手に、聖騎士団の4人に近づいていった。




