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復讐者  作者: 安慶
最後に望むもの
397/421

5、タリカ拗ねる

 レイが神の像から飛び降り駆け出そうとした時、懐かしい声が聞こえてきた。

「おい!」

「うわっ!スミスか?」

懐かしいスキンヘッドが近づいてくる。

「勢い殺しちまって悪りいな。頼まれてたもん出来たぞ。」

スミスは白い包みをレイに渡す。

「ありがとう。使う人間は今はここにいないが。」

「礼はエラに言ってくれ。作ったのはほとんどアイツだ。俺は言われるまま作っただけだ。」

「スミス、良いのか?付いてきて。」

レイの心配をよそにスミスはハンっと笑った。

「今更その言いぐさはどうよ?散々巻き込んどいてよ。」

「ゴメン。」

「良いさ。こんな面白れえもん普通は見られねえ。まっせいぜい俺を守りながら戦ってくれよ。」

「ぶっ。」

 レイはスミスの軽口に笑ってしまった。

昔はスミスやトムとこんな軽口を叩き合いながら旅をしていた。

今まさに最終決戦前の様相なのだが、マオハリたちと戦った時のような悲壮感や緊張感が無い。

何故これほどに気負いが無いのかと思う。

恐らくロックやセイン、スミスといった懐かしい顔ぶれに囲まれているからだろう。

レイの隣にはニコニコしているトムがいた。

レイは思わずトムに微笑みかける。

スミスの傍にはタリカがいた。

いきり立った冒険者たちやレイたちに囲まれて、かなり大人しいし目立たない。

「タリカ、やけに静かだな。」

 タリカはレイをチラッと見ると、ブツブツ言い始めた。

「俺さ。田舎でのんびりしたかったんだよね、人生。何でこんなとこで王勅命で、司令官みたいなことやんなきゃなのよ。」

タリカはぼやき出すと止まらない。

「アッカが出張るんかなと思ったのよ。そしたら俺行けってなって、あの嫌味なお貴族連中から。俺牢屋で本読んでる方が良かった。」

ブツブツ言いながらガクッとしていたタリカが急にレイを睨んだ。

「だから絶対勝てよ。俺この戦い終わったら絶対ゴロゴロするんだ。」

「おい。それ死亡フラグってんだぞ。あまり言うなよ。死ぬぞ。」

「俺は死なねえ。いざとなったら逃げる。」

 この戦いの司令官は逃げる気満々のようだ。

実質的な司令官はレイのようで、その場にいる全員がレイの次の言葉を待っている。

冒険者たちの目はギラつき、兵士たちは力が入っているのか筋肉がパンパンだ。

「じゃあ、仕切り直して…。」

レイはわざとらしく咳をすると、

「ここから神の塔に一気に攻め込む。立ちふさがる奴は全員敵だ!行くぞ!」

と再び号令を出し、神の塔に向かって走り出した。


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