4、カウミの活躍
ギルガ神聖国の中心部には高い塔が集まっており、その中心のひときわ高い塔に神が住んでいる。
レイたちはその塔に近い広場に集まっていた。
国境の砦からここに来るまでの間、誰1人として通りにはいなかった。
恐らく教会から家から外に出ないように通達があったのだろう。
その方がレイたちにも有難かった。
「よお。久しぶり。」
「セイン!」
レイは思わず駆け寄った。セイクルズがここにいるとは思わなかったからだ。
「ジャイルたちと来たのか。」
「いや。東の方からだ。」
「東?」
レイはセイクルズが引き連れてきた集団を見る。
全員冒険者風情で、持っている装備や雰囲気からかなりの強く、ベテランと思しき連中だ。
「ライバ。」
「へっ何です?」
急にセインに声をかけられて、レイの後ろにフワフワと漂っていたライバが間抜けな顔をしている。
「カウミに礼を言っといてくれ。」
「ん?うちのワイフに?」
キョトンとするレイとライバにセインは事情を説明した。
どうやらカウミはレイたちがラガッシュ帝国で戦っている間、マイロがせっせと送った魔族に関する資料を丁寧に調べたらしい。
その資料の中に、殺して魔族にした冒険者の名前が書き連ねられているものがあったそうだ。
「そう。あたしら知ったんだ。」
セインの後ろにいた女の冒険者がライバに話しかける。
「あたしの夫を。」
「俺の親を。」
「僕の親友を。」
「私の兄を。」
全員目がギラついている。
セインは冒険者たちを抑えながら説明を続けた。
「アッカディー国王から冒険者ギルドに事情を説明してもらって、資料を送ってもらって。ギルドも半信半疑だったらしいが、失踪したとか死亡したと言われている冒険者と関係ある連中に話聞いてな。納得したらしい。」
「で支援してくれたと。」
「いや。あくまでもギルドは冒険者たちに知らせただけだ。教会と帝国が冒険者殺して魔族作ってるってな。」
魔族にするために殺された冒険者の親しい人たちが集まってくれたらしい。
元々Bランク以上の冒険者を狙って魔族にしていたからか、今集まっている冒険者たちもかなり強そうだ。
「お久しぶりです。レイさん。」
ニコニコしながらサクソウが近づいて来る。
「サクソウ!無事だったか!」
レイが返事するよりも先に、ロックたちがサクソウの周りを囲む。
「何とか。捕まりそうになりましたが、その前にジャイルさんのおかげで逃げました。」
「何があった。」
サクソウが同級生に会った時殺気のようなものを感じたらしい。
レベル100を超えた僧侶を、キングリッチの代わりとして魔族製造機にするのではとサクソウは説明した。
「危なかったな。」
「はい。あっ、ショウダイさんたちも無事ですよ。レイさん、驚くかも。」
サクソウの目線の先には、ジャイルと話し込んでいるショウダイ・アサミ・ユウナがいた。
「ジャイルさん。」
「レイか。久しぶりだな。」
「はい。ショウダイ・アサミ・ユウナも。…雰囲気変わったな。」
レイが言う通り、3人の雰囲気が前と比べ物にならないほどに変わっている。
凄みというか気迫のようなものが感じられる。
「鍛えましたから。かなり。」
「こんな短い期間で?」
「うん。ジャイルさんがね。」
3人がチラッとジャイルを見る。
ジャイルにこってりみっちり相当鍛えられたようだ。
ジャイルは3人の視線に気が付き、苦笑いしながらレイに言った。
「事前の打ち合わせ通りには、あの方も合流するのか。」
「はい。向こうが片付いたら来るそうです。ディーディーが迎えに行ってるんで。」
「伝説のドラゴンが乗り物か。いいな。」
北・西・東からギルガ神聖国に入り、中心部に近い広場にレイ・ジャイル・セインたちが合流した。
ここから中央の棟、神が住まう塔へと攻め込む計画だ。
レイは剣を抜くと、広場中央の神を模った像の上に乗り、高らかに宣言した。
「ここから神の塔に一気に攻め込む。行くぞ!」
うおおおおという雄たけびがあちらこちらから上がった。




