2、ラガッシュ帝国側の砦
その日はいつも通りに始まった。
朝支度をし、門の前に立つ。
昼前に交代だ。
これを何日も何日も繰り返していく。
不貞腐れた表情の兵士が、ごつごつとした岩山とその間の道とを凝視する。
ここはギルガ神聖国とラガッシュ帝国との国境の砦だ。
配属されるのは何かをやらかした兵士が多い。
アッカディー王国側とは違い、ここを通る人や荷物は怪しいものが多い。
調べようとすれば怒鳴られ、調べずに通してトラブルが起これば隊長から叱責される。
理不尽そのものの仕事だ。
多くの兵士が1か月持たずに辞めていく。
「ん?」
ラガッシュ帝国側を見つめていた兵士の1人が異変に気が付く。
「どうした?」
「何か大きな影が飛んでる…ドラゴンってあんなに大きい…うわあああああ。」
巨大なソレは、子供のころ絵本で読んだ、学校の授業で習った、まさしくそのものの姿だった。
「あれっ。ドラゴン?金色って。」
「グレイトドラゴン…じゃないよな、多分。いるわけないよな。取り敢えず戦闘準備!」
全員ワタワタと武器を持ち、配置につく。
「うっ撃て!」
号令と共にドラゴンめがけて矢や魔法が放たれる。
すると突然巨大なドラゴンがしゃべった。
「やだあ。かゆうい。」
どうやら痒がっているようだ。
ダメージを受けている様子は一切ない。
グレイトドラゴンは上空で旋回すると、何やら大声で叫んでくる者がいた。
「皆さーん。抵抗しなければ命の保障はします。抵抗したらグレイトドラゴンが全てを焼き尽くしますよお!」
「ひいいいい。やっぱり。」
戦意を喪失する者、無駄な抵抗と分かっていて矢を放つ者、逃げようとする者、砦の中は既にカオスだった。
「隊長お!」
「今度は何だよ!」
「前方から…リザートホーズっぽい何かが。」
「リザードホーズっぽいって?」
隊長がラガッシュ帝国へと通じる道を凝視すると、リザードホーズとは思えない程マッチョなリザードホーズっぽい何かが馬車を引きながら高速で向かってくる。
「来るぞ!門を塞げ。門を守れ!」
その命令も虚しく、リザードホーズっぽいマッチョが門に蹴りを食らわした。
「ゴケエエエエエ。」
「うわあああああ。」
ラガッシュ帝国とギルガ神聖国との間にある砦は、ものの10分でレイたちによって制圧された。




