44、時機
突然鳴ったレイの通信袋に、全員がビクッとする。
「おいレイ。誰からだ。」
「タリカだ。」
意外な人物からの連絡に、レイは戸惑う。
タリカは今、旧国境の砦でなんちゃって捕虜生活をしているはずだ。
「まさか、アッカデュー王国が攻めて来たんじゃ。」
「さすがに早いでしょ。戦力の分析・兵の選定・戦略って考えなきゃいけないし。1か月も経ってないし。」
「また何か問題起きたんじゃ。」
口々に不安を口にする。
レイはタリカと二言三言会話した後、ザムたちの方を振り返った。
「聞いてくれ。これからのことを話す。」
全員の視線がレイに集中する。
「今からギルガ神聖国に向かう。」
「神聖国に行くって。まさか。」
「次に殴る相手は『神』だ。」
レイの言葉に、ザム以外が黙り込む。
ザムがニヤリと笑った。
「何かあったんだな?」
「その通り。行くなら今しかない。」
「はああ。よっこらせ。」
ロックが重そうに体を起こす。
レイは全員を見回した。
チルもゴゴズも真剣に聞いている。
「スミスたちが補給してくれるから物資は心配ない。ザムは新しい魔法袋持ってくれ。ここに残りたい奴、タリカ大領に戻りたい奴も言ってくれ。俺は行く。」
レイの言葉にロックは再びため息をついた。
「行きたくない訳じゃねえ。むしろ行きたいんだ。神ってどういう奴か見たいしな。サクソウにも会いたいし。」
「そうね。サクソウがいないと回復がちょっとね。」
「行きますか。」
「というわけで、レイ。俺たちは行く。しかしなあ。お前ってホントせわしないな。会ってから2年くらいだっけか。お前の周り、色々起こりすぎだろ。」
「すまん。」
「俺たちも行きますよお。」
チルが元気に叫ぶ。
「ちょっと残兵もいるから、皇帝が変わったけど襲ってくる奴いるかもしれないし。誰が付いて行く?」
「俺とチルは行くぞ。」
ゴゴズが槍を持って元気に立ち上がった。
ワイワイと話し合う中、アトラントが静かに皇帝の間へと入ってきた。
全員の視線がアトラントに集中する。
「皆さん。勝ったんですね。」
「そうです。ありがとうございます。」
「で、今からギルガ神聖国に行くと。」
「はい。」
アトラントはしばらく考えていたが、「よしっ。」と言うと話始めた。
「私たち魔族がここに残ります。行ったら魔族が来たってややこしくなりそうですし。残兵はほとんど無抵抗でしょう。抵抗してくる兵は私達でもなんとか対処出来ます。」
「大丈夫ですか。」
「そこの魔法兵をレイさんの奴隷にすれば。」
抵抗側で最後まで戦っていた魔法使いがビクッとする。
「そうですね。生き残っている奴は回復して俺の奴隷にします。皆さんの戦力になるでしょう。」
「死んだ兵士の埋葬もありますし。準備終わったらすぐ行ってください。」
「はい。」
レイはアトラントと握手をした。
準備を終える頃には既に日が傾いていた。




