40、5000人対12人
レイが下から逆袈裟斬りする。
レイが最も得意とする斬り方で、体格の差を埋める強力な一手だ。
相手は左手に持った剣で攻撃を防ぐと、右手の剣でレイの左わき腹を切りつける。
両手剣使いと対峙したレイは、少々苦戦していた。
1対1で人間相手に苦戦したのは久しぶりだ。
脇腹への攻撃をすんでの所で躱したレイは、左足に力を入れ、腰を捻るようにして剣で突きさそうとする。
後退して間合いを取るだろうと思っていた帝国兵は、レイの予想外の攻撃にわずかに動きが止まった。
肩を突いたのだが、鎧の継ぎ目部分では無いため大したダメージを与えられていない。
だが、相手の態勢を崩すことに成功したレイは、首筋を切りつけた。
オリハルコンの鎧でも、継ぎ目や首の部分は弱い。
首をガチガチに固めると、頭の動きが制限されるためだ。
首の部分に剣の斬り筋に沿うように穴が開いた。
もう1度同じ場所を攻撃すれば、相手の首を切断できる。
レイは攻撃を当てようと、執拗に首を狙い始めた。
ザムの相手は棍棒使いだ。
恵まれた体格と体力で、ザムの攻撃をものともしない。
ザムもやはり苦戦していた。
相手と体格だけではなく、レベルの差もあるようだ。
ザムはレイと旅をするまで、魔物1匹倒したことが無い。
キングリッチを倒し、帝国兵をある程度倒したことでレベルは上がったが、長年レベル上げに勤しんでいる相手には分が悪い。
ザムは無駄のない動きで相手を切りつけているが、攻撃が軽いのか、相手の鎧に傷をつけるのがやっとだ。
「ザム、離れて!」
レシーアの声にパッと飛び退く。
帝国兵の顔目掛けて火魔法がさく裂した。
悲鳴にならない声を上げて苦しがる帝国兵にザムは斬りかかる。
正確な動きで鎧の継ぎ目にダメージを与えていった。
「何かこっちが苦手としてる相手をぶつけてるみたいね。」
レシーアは後方から相手の戦力を冷静に分析していた。
アレスは槍使いの長いリーチに攻撃が加えられないでいるし、ロックの相手は斧使いだ。
ゴザも小回りの利く相手にダメージを中々与えられていない。
レイやロックたちは1対1で、レイの奴隷たちは3人がかりで帝国兵と戦っている。
ケガをした者は他の奴隷に代わり、相手に休む隙を与えない。
ドンという鈍い音に目を向けると、ゴゴズがクラトースに吹き飛ばされていた。
「ロック!ゴゴズと代わって!」
レシーアは叫び、クラトース目掛けて魔法を放つ。
クラトースは両手に持った斧を巧みに使い、レシーアの魔法を弾き飛ばそうとした。
その隙にロックがゴゴズの前に飛び出てクラトースの相手をする。
「ゴゴズ!右の兵!」
ゴゴズが先ほどまでロックと戦っていた斧使いの兵士に向かっていく。
レシーアはチルたち魔法部隊を率いて、周囲の警戒の他、タイミングを見計らって魔法を放っていく。
時々皇帝目掛けて撃つのだが、皇帝の前に立ちはだかる魔法使いに弾かれ、全く魔法攻撃が当てられない。
レイたちと戦っている帝国兵たちは中々に強かったが、徐々に疲労の色が見え始めた。
1人1人と倒れていき、最後にクラトースと皇帝を守る魔法使いが残った。
「マイロを騙しやがって。お前だけは許さん。」
対峙していた帝国兵を倒したレイはクラトースの前に立ち、剣先を向けた。