38、合流
レイたちはヒット&アウェイを繰り返しながら帝国の城を攻め続けた。
初日にディーディーのブレスで城を半壊させたが、その後はブレスを封印した。
アトラントが言うには、強力なブレスを溜めるのには時間がかかるため、チルたちと合流するまでは抑えて攻撃していた。
レイたちも装備を替え、タック・フクン・アレスをザムに預けて6人で帝国兵の数を削ることに専念した。
相変わらず帝国兵はオリハルコンの装備を身に着け、隊列を組んで攻撃を加えてくる。
レイ・トム・ジャミ・ロック・レシーア・ゴザの魔力と体力が尽きるまで攻撃し、頃合いを見計らって逃げる。
ディーディーを離れた場所に待機させて、煙や光魔法で帝国兵を妨害しながら逃げた。
魔法主体の攻撃・物理攻撃主体で攻める、時間もバラバラで攻める場所も変えながら、
帝国の城を攻めはじめて5日目の夕方、チルたちがとうとう帝都に到達した。
チルたちは不気味なほど順調に移動できた。
途中さらに2つの町のそばを通ったが、門が固く閉ざされ、攻撃をしてくることは無かったという。
近くの森で1泊し、日が昇るとともに攻撃を開始する。
レイたちは装備や道具を点検し、最後の確認をする。
「アトラントさん、もしもの時はディーディーに乗って逃げてください。」
「そうならないように、万全を尽くせ。後ろは任せろ。」
白銀の鎧を身に着けたアトラントがレイを励ます。
斥候はジャミを除き、レイたちが負けた時のために配置することになった。
タック・フクン・アレスを連れて、魔族領に逃げてもらうことにする。
「ザム、明日は俺たちと一緒だ。覚悟は良いか。」
「もちろん。俺が先頭を務める。もしもの時はお前らだけでも逃げろ。」
「そこまで言うか。」
「当たり前だ。元はと言えば俺がレイを誘ったからだ。レイにとっては魔族と戦ってた方がどれだけ良かったか。」
「そうでも無いと思うが。」
マオハリたちと戦い、ドインが死んだ時のことを思い出す。
あれが今より良い事なのか分からない。
「チル、ゴゴズ、準備は。」
「バッチシです。帝国の奴ら1人でも多く倒しますよ。」
最初キッコーリ村であった時はヒョロヒョロで頼りなかったチルが、今では優秀な魔術師となった。
レイはチルの肩に手を置くと、ロックたちを振り返った。
レイが何かを言う前にロックが苦笑いをしながら話始めた。
「くさいセリフ言うの止めろよ。俺はそんなの苦手なんだ。」
「言わせろよ。」
「冒険者ってのは常に覚悟してるもんさ。今更聞くなよ。」
ロックはレイの返事を待たず、背を向けて「さあ寝るか。」と伸びをした。
レシーアが微笑みながらレイに近づく。
「ロック、相変わらずでしょ。それが彼の良い所よ。じゃあ、私たちも寝るわね。」
ゴザがレイの肩に手を置き、レイは頷き返した。
どうやらこの場で力が入っているのはレイだけのようだ。
「うにゃああ、眠いにゃあ。」
「レーイー、寝よお。」
「わっふ。わっふ。」
タック・フクン・アレスがレイの足にまとわりついてくる。
レイは自分が満足するまで3匹を撫でた。
フワフワの毛並みの3匹を撫でるうち、レイもいつの間にか寝てしまったようだ。
レイは日が昇る前、薄暗い空の下、皆の顔を見回した。
「準備は出来たな。これが最後の戦いだ。勝つぞ!行くぞ!」
レイの声に『おうっ!』とその場にいた全員が呼応し、それぞれ配置につく。
東から日が昇ろうとしていた。




