36、対峙
3時間ほど戦っただろうか、レイたちが疲れた時はロックとゴザが前に出る、ロックたちが疲れた時はレイとトムが前に出る、と連携を取りながら帝国兵の数を減らしていった。
玉座が見えた時、レイたちの攻撃がさらに増す。
「レイ!畳みかけるぞ。」
「おうよっ。」
ロックの掛け声にレイは前のめりに攻撃を始めた。
「はああっ。」
「させない!」
レシーアが後方からタイミングよく魔法を撃つ。
帝国兵後方の魔法部隊を狙う範囲攻撃と、1人を狙う攻撃を織り交ぜながら、レシーアは魔法を撃ち続けていた。
魔力切れになりそうなものだが、スミス特製バズーカ砲のおかげで魔力が温存でき、さらにレベルが100を超えたことでかなり魔力量が増えたため、レシーアが使った魔力ポーションは2本だけだ。
「にゃにゃあ。」
「回復かけるねえ。」
タックとフクンも折を見てレイたちに回復魔法をかけている。
2匹とも攻撃魔法が得意な方ではない。
温厚な性格で補助魔法や回復魔法が得意なのだが、今はレイのためにと時々攻撃魔法を撃ち頑張っている。
ザシュッという音と共に帝国兵が倒れた。
アレスの放った風魔法が鎧の継ぎ目を、そして帝国兵の喉を引き裂いた。
アレスの物理攻撃の力ではオリハルコンを貫通させることは出来ないため、母親であるキングウルフから教えられた風魔法を上手に使いこなしている。
「させませんよお。」
ライバは凶悪な魔物そのもので、無慈悲に複合攻撃魔法を放っている。
複合魔法が耐性を無効化し、帝国が用意した高価なエンチャントを価値のないものにしている。
レイたちはジリジリと歩みを進め、とうとう玉座の目の前まで来た。
ジャミの実の弟であるラガッシュ11世は、敵が目の前に迫っている状況にも関わらず、足を組み平然としていた。
不意にロックがレイに近づき、小さく呟いた。
「レイ、用心しろ。何か企んでるぞあいつ。」
レイは小さく頷き、周囲の気配に気を配る。
目の前の敵に集中したいが、今の形勢を一気に逆転できる何らかの罠があると感じていた。
既に帝国兵は死亡しているか戦意を喪失している。
辺りには血の匂いが立ち込め、兵士たちの死体が散らばっている。
「口上なしだ。一気に行くぞ。」
「おう。」
ロックとレイが一気に玉座に迫った時、レシーアたちのいる後方から小さな悲鳴が聞こえてきた。




