38.防衛村
「何だこれ。」
夕暮れ前にキッコーリ村にたどり着いたロックウッドの面々は、王都をはるかに凌ぐ防壁と門に唖然となった。
門の周りには堀が巡らされており、門を上げてしまえば完璧な籠城が出来る。
全員でぼーっと眺めていると、門番をしていた村人があまりの人数が訪問したことに驚いて走ってきた。
ロックは自分の冒険証を見せながら、村長に至急会いたいと伝えた。
初めてみるAランクの冒険証にしどろもどろになった門番が、村長の家へと案内する。
「ほわあ。なんじゃい。村攻めてきよったか。」
料理中なのかおたまを持ちながら出てきた村長は大層驚いていた。心なしか白髪もいつもより逆立って見える。
「村長いきなりすまない。実は…。」
王都で起こったことを話し、なぜ封鎖されているのか調査中なこと、今後も王都を訪れた人が村に来るかもしれないことをロックは伝えた。
「困ったのう。宿10人も泊まれんのじゃ。」
「それは仕方ない。野宿する。食料も調達する。」
「嫌な予感がするのう。王都がそんなんじゃと。そうだのう。」
しばらく村長は考えていたが、ふと傍らにいるキッコンに話しかけた。
「レイとトムを呼んでちょ。2匹の猫ちゃんも。」
「はい。」
キッコンが急いで2人と2匹を呼びに行く。
村長はロックの方に向き直って、
「うちには冒険者は2人しかおらんで。Eランクなんじゃが、結構強いぞ。」
「そうか。」
「まっ座ってちょ。これからのこと話しよう。」
ロックは家の外にいる商人や旅人たちに野宿の準備をするように伝え、ミナ以外のパーティーの面々と腰を下ろした。
村長は棚からペンと紙を取り出し何かを書いている。
ロックたちがしばらく話をしていると、猫をおんぶしたレイとトムが走って家の中に入ってきた。




