31、助っ人
「後退しますぞ!」
「はいっ。」
ライバの決断にチルが反応する。
チルたちはリザートホーズの馬車で、ゴゴズたちは徒歩でラガッシュ帝国の中を南進していた。
事前のジャミの情報では、約20万の帝国兵は帝都で城の守備を固めていたはずだった。
だが実際には、チルたちの南進を完全に読んでいたかのように、東側から万を超える帝国兵が攻撃を仕掛けてきた。
チルたちは最初の計画を変更してゴゴズたちと一緒に進んでいたが途中で分断され、帝国兵との戦いを強いられている。
レイやロックはオリハルコン製の装備だが、チルたちはまだアダマンタイト製の装備だ。
装備と強さは互角、数で圧倒され、苦戦を強いられている。
「これ以上ケガ人が出たらいけません。私が殿を務めますので早く逃げて。」
ライバが最後尾で帝国兵と戦う役をするという。
チルは唇を噛みしめて後ろを振り返った。
「全軍撤退!撤退!」
赤い色の花火が打ち上げられ、後退することを皆に告げる。
「んっぐ。」
「ライバさん!」
「早く!逃げて!」
1人で帝国兵を相手にするライバだが、リッチに有効な光魔法を連続して浴びせられ弱ってきている。
チルは加勢しようとしたがライバに止められ、馬車の中で震えながら顔を伏せた。
「ぎゃああああ。」
「ライバさん!」
凄まじい悲鳴に思わずチルは馬車を飛び降りる。
ライバの断末魔だと思ったその声は、意外なことに帝国兵から発せられたものだった。
「何が?」
チルの目の前を黒く大きな影が横切る。
ゴアアアアという聞いたことのある咆哮と共に、黒いブレスが帝国兵たちに浴びせられた。
帝国兵たちはなすすべなく、黒く焼けただれていく。
「これって。」
立ち尽くすチルが見たのは、空を覆いつくすほどのブラックドラゴンが、帝国兵たちに強力なブレスを浴びせる姿だった。
「ライバ殿!」
上空から声をかけてきた者がいた。
ライバが見上げると、1匹のブラックドラゴンが下りてくる。
ブラックドラゴンの背中には、アトラントが1人の魔族と共に乗っていた。
「アトラント様。」
「助太刀に来た」
「助かります。チルさん、ゴゴズさんと合流してください。」
「はいっ。」
アトラントが乗ったブラックドラゴンは再び上昇し、帝国兵目掛けて特大のブレスを放つ。
帝国兵から突然の攻撃を受けたチルたちは、アトラント達魔族の加勢により、かろうじて勝利を掴むことになった。




