28、ディーディーブレス
「ここでいんじゃないか?」
レイたちは以前ジャミを見つけた空き地に降り立った。
帝国軍に見つからないギリギリの場所にある空き地に拠点を作る。
ここにレイが魔法陣を作り、レイの家の地下にある魔法陣とつなげて奴隷たちをこちらに連れてくる予定だ。
色々試したが同じ場所に2つ以上の魔法陣を作れないようなので、1つの魔法陣で戦闘に参加する奴隷とリザードホーズたちを連れてくる。
奴隷たちの受け入れをチルとゴゴズに任せ、レイたちは周辺の魔物を狩る。
ジャミは既にラガッシュ帝国に入り、偵察していた。
「ジャミは信じられるのか。」
今日何体目かのサイクロプスを倒したロックがレイに尋ねる。
「ミナを失った悲しみは本物だった。ジャミを信じられなきゃ負ける。」
人としては『灰色』のジャミだが、ミナの仇を討つために放った言葉はウソをついていない。
レイはジャミを信じていた。
レイたちが拠点で一夜を過ごし、日が昇る前の薄暗い時間にジャミが戻ってきた。
かなり疲れた様子でチルから渡された食事をガツガツ食べている。
「ジャミ、お疲れ。」
ジャミの気配を感じ取ったレイが起きてきた。
「うん。やっぱり帝都周辺を兵で固めてるみたい。」
「そうか。」
「町にほとんど兵がいなかった。衛兵だけだと思う。」
「ということは、俺たちは約20万の兵士を相手にするってことだな。」
「だと思う。寝たらまた行く。」
言葉少なくジャミは食事を終えて立ち上がった。
全員が揃うまで偵察を続けるらしい。
レイの作った建物へと入っていくジャミをレイは見つめていた。
5日かけて全員が揃ったことを確認したレイは、ディーディーに乗り帝都を目指す。
チルはリザートホーズの馬車で、ゴゴズたちは徒歩で移動する。
レイ・トム・ジャミ・ザム・ロック・ゴザ・レシーア・タック・フクン・アレス。
たったの7人と3匹がディーディーに乗っている。
ディーディーの背中にはもっと大勢乗せられるのだが、数で圧倒的に不利なレイたちは、小回りが利くように少人数で攻め込む。
馬車組が城まで来るのに3日、ゴゴズたち徒歩での移動では7日ほどかかる。
それまでレイたちは城を7人と3匹で攻める予定だ。
「外壁にも罠があるらしいからな。全部潰していく。」
攻撃用の魔道具も魔法袋にゴッソリ入っている。
情けをかける気は全くない。
2時間ほどでディーディーはラガッシュ帝国の城に到達した。
この中にマイロがいる。
ラガッシュ11世は既にレイたちが来たことを把握しているはずだ。
城の中にはアダマンタイトの装備を身に着けた兵士が待ち構えていて、罠もあちらこちらに張られているだろう。
だが引き返すという選択肢はレイたちに無い。
ラガッシュ11世を殺しマイロを救い出すため、一気に攻撃を仕掛けるつもりだ。
ディーディー目掛けて城から魔法が一斉に撃たれた。
「やだ。かゆ~い。」
だがディーディーは攻撃をものともせず、痒がっている。
「じゃ、こっちから行くよお。」
ディーディーは喉を膨らませると、城目掛けて一気に高温のブレスを放つ。
高温のブレスで城壁や城の一部が溶けた。
兵士も大勢いたはずだが、高温のブレスで跡形も残っていない。
「じゃ、つっこも~か。」
ディーディーはそう言うと、城目掛けて急降下した。




