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復讐者  作者: 安慶
神への抵抗
374/421

27、召還命令

 宿に戻ったサクソウは短い手紙を2通書いた。

1通は3人の勇者に、もう1通はタリカに送る。

サクソウの直感が正しければ、この先トリーゾから報告を受けたギルガ教会に命を狙われる。

レベル100を超えた僧侶。

キングリッチがレイたちに倒された今、強い魔族を作るため、豊富な魔力を持つサクソウはその代わりとなるだろう。

これからどうするべきか、1日は二日酔いということにして宿から出ないようにすれば良い。

問題はその後だ。

恩師やトリーゾと再び会う約束をしてしまった。

もしトリーゾに再会したら、そのままサクソウは行方不明になるだろう。

 丸一日宿で過ごしたサクソウは、次の日の朝、旅支度を終えていた。

悪手となるかもしれないが、捕まる気は全くない。

このままアッカディー王国に逃げ切るのが一番だと考えていた。

トリーゾたちから怪しまれるかもしれないが、これ以上調査を続けることは難しい。

軽く食事を終え部屋を出ようとした時、階下から荒々しい足音が聞こえてきた。

 扉を軽くノックされ、サクソウは身構えた。

少しの時間が過ぎた時、懐かしい声が聞こえてきた。

「Aランク冒険者パーティー、ロックウッドの僧侶サクソウだな。アッカディー王国より召還命令が出ている。速やかにアッカディー王国に戻られたし。」

宿中に響き渡るその声に、サクソウは思わず扉を開けた。

恐らく笑顔だったのだろう。

相手は真顔だったが、少し口角が上がっていて目がいたずらっ子のようにキラキラと輝いている。

「我らはアッカディー王国騎士団である。貴殿に拒否権は無い。」

仰々しい召還状を持ったジャイルが、サクソウの目の前に立っていた。

「仰せのままに。すぐに支度いたします。」

隣にいる3人にはっきり聞こえるように大声で返事をすると、サクソウは出立する準備をする振りをした。

既に準備は終えていたのだが、どこで誰が見ているのか分からない。

 サクソウは王国騎士団に脇を抱えられるように階下に下りると、宿屋の受付で出立するため泊まらないことを伝えた。

残念がる主人に小銀貨を2枚握らせると、恩師とトリーゾへの言付けを頼む。

確かにお伝えしますと言う主人に別れを告げ、サクソウは宿に横付けされた馬車に乗り込んだ。

裏通りに似つかわしくない物々しい馬車に、周囲の人の視線は釘付けだ。

馬車はサクソウとジャイルを乗せて、足早に国境の検問所へと向かう。


 サクソウとジャイルが宿を出てから1時間後、ショウダイたち3人は宿を出た。

今日で巡礼を終えて帰ると宿屋の主人に告げ、3人はのんびりとアッカディー王国へと向かう。

アッカディー王国に入り検問所から見えない位置まで来ると、3人は凄い勢いで走り出した。

走り続けて3時間後、ようやくサクソウたちに追いつく。

サクソウとジャイルはアッカディー王国南部にある、王国騎士団が駐屯する町にいた。

「お待たせしました。」

汗びっしょりのショウダイがジャイルに話しかけた。

「いや。こちらも休んでいたところだ。サクソウから大体聞いた。」

ジャイルの言葉にサクソウは頷く。

「やはり教会が魔族作りに関わっていることは間違いないでしょう。」

「そのトリーゾという男が首謀者なのか?」

「いえ、そこまでは分かりませんでした。でも事情は誰よりも知ってるでしょう。」

サクソウの言葉をアサミが引き継ぐ。

「こっちの情報では、小国群から来た冒険者がちょくちょく行方不明になってるって話を聞いた。パーティーごといなくなったりしてるみたい。冒険者だから誰も探さないって。でも荷物が宿屋に置きっぱなしでいなくなって、後から教会の人が取りに来るって。」

ユウナも話に加わった。

「教会でも下っ端は全然知らないみたい。でも強い冒険者を探してるって言ってた。聖騎士団にスカウトするって。上からそうしつこく言われてるって愚痴ってた。」

「俺たちもどれくらいか聞かれた。Eランクって言ったら急に態度が冷たくなったよ。少なくともBランク以上じゃないとだと。」

ショウダイが苦笑いしている。

「もう少し調べたかったんですがね。さすがに身の危険を感じまして中断しました。」

悔しそうなサクソウをジャイルが慰める。

「皆無事だったんだ。それが一番だ。それに難しい状況でも情報は集まった。整理すると、Bランク以上の冒険者が魔族にするために誘拐されている。教会の高位の神官が関わっている。その中にトリーゾもいる。」

サクソウたちは同意するように頷いた。

 ジャイルは真剣な表情で4人に言った。

「で問題はここからだが。タリカ大領には戻れない。4人にはここを拠点としてもらう。覚悟しろよ。特にショウダイ・アサミ・ユウナ。」

ジャイルの言葉に3人の顔が引きつった。

その表情を見たジャイルが話を続ける。

「Eランクで満足してるわけではあるまい。稚拙な剣さばきに満足しているわけではあるまい。喜べ。みっちり教えこんでやる。」

不敵な笑みを浮かべるジャイルに、3人の顔はますます引きつった。

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