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復讐者  作者: 安慶
神への抵抗
372/421

25、勇者として

 日が傾き始めた頃、宿に戻ったユウナは魔法袋から手紙を取り出し、じっくりと読み始めた。

サクソウは筆圧が出ないように慎重に書いていたため、所々字がかすれている。

ユウナは黙ったまま手紙をユウダイとアサミに差し出した。

2人も手紙を黙ったまま読んでいる。

「今日の夜の予定は決まったね。」

「ああ。」

ユウダイは頷く。

 サクソウと勇者3人は慎重に行動していた。

会うことも話すことも無く、情報のやり取りは転移の魔法袋を使って手紙の交換をしていた。

読んだ手紙はすぐに燃やす念の入れようだ。

勇者3人は会話も最低限にして、筆談をすることもあった。

 たとえ宿の個室であっても、どこで誰が聞いているか分からない。

斥候が潜んでいたら、会話から勇者だとバレてしまうかもしれない。

相手は神と2つの大国だ。

慎重に行動するに越したことは無い。

 サクソウが教会の高官と会うことを知った3人は、サクソウの身を案じる。

サクソウは魔族の情報を探っている。

何か核心に近づいたのかもしれない。

3人はじっくりと装備を点検する。

スミスから定期的に物資が補給されているため、ポーションや予備の装備・魔道具は十分にある。

3人は顔を見合わせると、隣の部屋の物音を聞こうと静かに座っていた。

 しばらく待つと、誰かが階段を上がってくる音が聞こえてきた。

サクソウの部屋がノックされ、誰かがサクソウと話す声が聞こえる。

3人は食事をするために部屋を出て、急いで階下へと下りて行った。

宿の正面には裏通りに似つかわしくない豪奢な馬車が止まっている。

恐らくトリーゾの屋敷に向かう馬車だろう。

3人は馬車の方向から行き先を推測し、3人は少し先回りした馬車が見える位置で立ち話をしながら見張る。

傍から見れば夕飯をどこで食べようか話している冒険者たちだ。

「ねえ、毎日同じところは飽きるから別の所にしようよ。」

「マズかったらどうする?いつもの場所で良いっしょ。」

「屋台行きたいなあ。」

3人は会話しながら横目でサクソウが宿屋の主人に話しかけている所を見ると、ゆっくりと歩き出した。

角でまずはショウダイが、馬車が通り過ぎた直後ユウナが別の道に入る。

アサミは1本裏手の狭い道に入ると辺りを見回す。

誰もいないことを確認すると一気に走り出した。

 誰かにトリーゾの屋敷の場所を聞くことも出来たが、変に疑われることを避けて尾行することにした。

馬車は予想通り神聖国の中心部、高い塔のある場所へと向かっている。

3人は目立たないように走りと歩きを繰り返し、バラバラに馬車を追って行く。

 夕暮れ時、トリーゾの屋敷に着くころには3人とも汗だくになっていた。

神聖国には珍しく屋敷の前に広い庭があり、さすがは代々要職に就いていた一族の屋敷だ。

他の屋敷よりも大きく、白い壁が夕暮れの中に浮かびあがっている。

屋敷の正面に馬車は横づけると、サクソウはゆっくりと降り、丁寧に御者にお礼を言っている。

そうすることによって3人が自分を見つけやすいように時間を稼いでいるのだ。

サクソウは門番にも丁寧に挨拶すると、トリーゾに対して二言三言何かを言っている。

どうやら屋敷を褒めているようだ。

ひとしきり屋敷を褒めちぎった後、中へと入っていった。

 3人は合流後、屋敷周辺の人通りが少なくなるまで身を潜んでいた。

日が完全に落ちると、闇に紛れるように使用人口から屋敷の庭へと侵入した。


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