37.完全封鎖
普段は日が昇ってから落ちるまで開いている王都の門は、この日朝から閉じられていた。その前には商人や旅人が立ち尽くしている。
馬車を降りたロックウッドの面々は、門前で悪態をついている商人に声をかけた。
「この騒ぎは何だ。」
「はっ。これはAランクパーティーのロックウッド様で。長旅でお疲れではないですか。良いポーションありますよ。私ポッタと申しまして。以後お見知りおきを。早速ですが、私の商品をご覧いただいて。」
王都に入れない異常事態よりも商売っ気が勝ったポッタが一気にまくし立てる。
会話にならないと悟ったロックが隣にいた旅人に聞いた。
「僕にも分からないんです。朝来たら閉まっていて。声かけても返事ないし。」
旅人はうろたえながら答えた。
ロックは門脇にある監視塔に人影を発見し、大声を張り上げた。
「おい。俺らはAランクパーティー、ロックウッドだ。聞こえるか。」
監視塔から衛兵が少し顔を覗かせた。
「なぜ門を閉めてる。開けろ。」
顔を覗かせていた衛兵の姿が見えなくなり、今度は見覚えのある衛兵が姿を現した。
レイたちを連行した衛兵長だった。ロックはもう一度衛兵長に問いかける。
「国王の命令だ。しばらくは開かない。帰れ。」
ここに家があるんだがとロックは思ったが、
「なぜそんな命令が出ている。国王に会わせろ。」
強気に出るロックだったが、衛兵長は耳を貸すことも無く声を荒げた。
「国王の命令だと言っている。去れ。射るぞ。」
弓を構えた衛兵たちが監視塔に立ち、前に集まる人々に狙いを定める。
このままでは犠牲が出ると考えたロックが、傍らにいるポッタに話しかけた。
「この近くに町か村は無いか。そこに皆で行こう。」
「はい。歩いて5時間ほどのところにキッコーリ村があります。行ったら驚きますよ。」
何が驚くのか分からないが、一旦村のことは置いといて、今度は仲間に声をかける。
「ミナ。」
「うん。」
少し離れたところで様子を伺っていたミナが近づいてきた。
「何が起こっているか調べてくれ。」
「分かった。キッコーリ村だよね。そこで落ち合うでいい?」
「ああ。頼む。」
ミナは人ごみに紛れて姿を消した。
ロックは声を張り上げてその場にいる全員に伝える。
「聞いてくれ。ここで待っていても門は開かないようだ。安全を考え近くの村に移動する。馬車に人が乗せられるのであれば乗せてやってくれ。早く移動したい。あと紙と書くもの持ってる奴いるか。でっかく書けるやつがいい。」
商人や旅人たちはザワザワしていたが、1人の商人が大きな紙と太いペンのようなものを差し出した。
「助かる。キッコーリ村への道を教えてくれないか。」
「一本道なんでね。迷うことは無いですよ。」
そう言いながら、ポッタは道順や目印を伝えていく。
僧侶のサクソウが紙に書き写していき、ロックが言葉を添えた後、門に貼りだした。
上から衛兵が何か騒いでいたが、
「うるせえ。剥がしたけりゃ門開けろや。」
一喝したあとロックは後ろを振り返り、
「待たせたな。この中に冒険者はいるか。ああ、お前らポッタと一緒に先頭歩いてくれないか。最後俺たちが付いていく。急いでいくぞ。日が暮れたら危ない。」
こうして100人を超える集団がキッコーリ村に向けて出発した。
門に貼りだされた紙にはキッコーリ村への道順と、王都には入れないため紙を見たものは急いで村に来るように書かれていた。文の最後には、Aランクパーティー・ロックウッド、ロックの署名あった。




