22、ジャミの決意
「ジャミ、大丈夫か。」
ディーディーの背中の上でレイがジャミに話しかける。
「何が。」
「顔色が悪い。ちゃんと休んでるのか。」
「放っといてよ。」
ジャミが顔をそむける。
2人の間にしばらく気まずい時間が流れた。
「あのさ。」
ジャミが口を開く。
「何だ。」
「マイロを連れてくだけじゃなくて、皇帝とか倒さなきゃだよね。」
「無理するな。」
今の皇帝はジャミの実の弟だ。
その上、ジャミは殺すのが苦手だ。
盗賊時代も気づかれないようコソ泥のような盗み方をしていたし、人間はもちろん魔物相手でも殺しに関わっているのをほとんど見たことが無い。
「俺も決着付けたいんだ。もし俺が盗賊じゃなかったら。」
ジャミは青い顔で話を続ける。
「俺が魔族を作ってたかもしんない。人間殺して。」
レイは黙っていた。
今はジャミが自分の気持ちを吐き出した方が良い。
そう判断したからだ。
「だから俺が皇帝を殺す。この短剣で。」
ジャミは腰に付けたミナの短剣をそっと触った。
自分が弟を殺す。
その決意を固めたいようだ。
レイの横にいたザムが気分を変えるように話かけてきた。
「親父に攻撃は続けてくれと言ってある。」
「今日のこと言ったのか。」
「いや。前回情報が漏れたからな。今回は攻撃続けてくれとしか言っていない。」
「ありがとう。」
「こっちが巻き込んだことだからな。」
「ディーディー、西側に行ってくれ。」
「分かった。にいに。」
ディーディーは方向を変え、魔族領との間にある山脈に向かって飛んでいる。
「西側から行くのか。」
「荒れ地で町は3か所だ。いくら戦争といっても相手の市民の被害が少ない方が良いだろう。」
「だな。」
ディーディーの高速飛行により、レイたちはラガッシュ帝国に入ろうとしていた。




