16、敗北
レイはロックの顔を直視することが出来なかった。
「ミナたちから、連絡は来てない。」
「そうか。」
ロックはレイの前に座り、静かに話始めた。
「どこまで知ってる?」
「何を。」
「ジャミのことだ。」
ロックの問いにレイは戸惑った。
だがロックの顔は真剣だ。
洗いざらい話す方が良いだろう。
「元盗賊の頭。俺の奴隷。特殊なスキルを持ってる。キングリッチが言うには『神の理から外れた者。』
「神の理。」
「そして『呪い子』と言われていた。」
ザムも話に加わる。
「盗賊になる前のことは知ってるか。」
「知らない。何も言わないからな。隠し事はあるだろうが。」
ロックは真剣にレイを見つめている。
傍らにはトムとゴザも来て座り込んでいる。
「ジャミが現ラガッシュ帝国の皇帝だってことも知ってるのか。」
「まさか!」
レイは信じなかったが、ロックがこの状況で冗談をいうとも思えない。
ロックは魔法袋から丸まった紙を取り出すと、レイに黙って差し出した。
レイは受け取った紙を読む。
ポッタから転移の魔法袋で送られてきたマイロの手紙だ。
レイは手紙をゆっくりと読み、読み終わった後ロックに返した。
「嘘だ。マイロの見間違いじゃないのか。」
「そうだと良いが。ミナたちが帰ってくればはっきりするんだがな。」
ロックは心配そうに南にある町を見つめていた。
ミナたちからは成功とも失敗とも連絡は無い。
口には出さないが、全員の脳裏に最悪の事態がよぎる。
「とりあえず安全な場所まで行きましょう。ここは町に近すぎる。」
ゴザの提案により、レイたちは大森林の中ほどまで後退した。
オーガやサイクロプスがいるはずだが、ディーディー効果か周りには魔物がいなかった。
眠れないまま一夜を過ごしたレイたちに、ジャミから連絡が入ったのは明け方だった。
弱々しい声のジャミを心配し、レイとロックは迎えに行くことを決める。
トムには散々心配された。
「レイさん、行くんですか?」
「ああ。」
「そんな体で。休んでください。自分が行きます。」
「いや。主人である俺が行く。マイロの手紙が本当かどうか聞きたい。ここ任せて良いか。」
「はい。無理しないでください。」
「分かってる。」
レイとロックは黙々と準備し、マッチョリザードホーズに乗って森を駆け抜ける。
ジャミたちは大森林まで逃げ延び、西側の山に近い所に隠れているそうだ。
マッチョリザードホーズはディーディーほどではないが、恐ろしいスピードで西へと向かう。
5日ほど走り続け、森の中で少し開けた場所を見つけた。
何かを感じ取ったのか、サイクロプスの集団がうろついており、レイとロックは2人がかりで倒していく。
ブラックドラゴンを一撃で屠れる2人には苦ではない敵だった。
「やっと倒した。レイ、ミナたちがどこにいるか分かるか。」
「待ってろ。」
レイが通信袋を手に持った瞬間、近くにあった岩山の側面がガラガラと崩れ落ちた。
中から薄汚れたジャミとやつれた様子のライバが出てくる。
「助かった…。」
倒れこもうとするジャミをロックが支える。
心配して助けたように見えたが、ロックは突然ジャミの胸ぐらを掴んだ。
「ミナはどこだ。」
ライバが顔を覆う。
ジャミは目を伏せながら、弱々しい声で呟いた。
「死んだ。」




