15、大逆転
「何で。」
「レイさん、ポーション飲んでください。」
レイとザムがチルから渡されたポーションを飲んだ。
「ヒール!」
さらに回復魔法で折れた骨も回復する念の入れようだ。
「何で。」
レイは疑問を口にする。
大森林を抜けることは不可能に近い。
ディーディーのように空を飛べるのであれば良いが、地上を行くと一カ月以上かかるし、サイクロプスなどの危険な魔物が跋扈している。
「あなたの可愛い従魔とその母親に感謝してください。」
「?」
「にゃああああ。」
「うにゃああああああん。」
「へっ?」
タックとフクンが帝国軍をまとめて風魔法で吹き上げ、遥か彼方に飛ばしている。
帝国軍と戦っているのはレイの奴隷たちだけではない。
よく見るとアレスやマッチョリザードホーズが鼻息荒く帝国兵をどつき倒している。
「話は後です。今は戦いに。」
トムに支えられてレイは立ち上がった。
トムはレイの顔についた血を丁寧に拭う。
「魔力無さそうですね。剣の方は。」
「問題ない。戦える。」
レイは剣を抜くと帝国軍に突進していった。
3時間ほど戦っただろうか、周りには帝国兵の死体が散乱している。
レイの奴隷たちが武具を剥ぎ取り、手際よく死体を燃やしている。
「レイ、大丈夫か。」
剣を収めたロックが近づいてきた。
ゴザもいるが、2人に笑顔はない。
「何で。」
今日で何回目かの疑問を口にする。
「あれを見てみろ。」
ロックが指さす方向を見ると、キングウルフとその一団がなぜか寛いでいた。
ロックの説明によると、レイが出発して約1時間後ロックたちも出発したそうだ。
レイの奴隷たちも大勢連れて行きたかったが、馬車では大森林の中を行くことが出来ず、マッチョリザードホーズに2人乗りで数十人ほどが同行する予定だったという。
そんな時、アレスの説得に応じたキングウルフたちが現れ、自分たちは戦わないことを条件に騎乗を受け入れたということだった。
レイはふらつきながらキングウルフの元に行き、深々と頭を下げた。
「ありがとうございます。」
「ふん。息子の頼みだからな。帰ったら美味い肉をたんまり献上せよ。」
「はい。」
足元にすり寄ってきたアレスの頭をレイは撫でた。
「アレス、ありがとう。」
「クウン。」
「タックとフクンも。」
「うにゃにゃ。」
「にゃりん。」
レイは思わず3匹を抱きしめる。
その後ろにはトムがニコニコしながら立っていた。
「トム、ありがとう。」
「これくらい、どうってことありません。いつまでもあなたの味方って言ったでしょ。」
「ああ。ハリナは。」
「はい。無事産まれましたよ。早かったですけど。女の子です。レイさんに名付け親になってもらいますからね。」
トムの言葉にレイは弱々しい笑顔を向けた。
絶望の中に希望が見えたように感じた。
そんなレイとトムのやり取りに、ロックが割って入る。
「すまないがレイに聞きたい。」
「ああ。」
「ミナは無事か。どこにいる?」




