14、親友
レイが兵士に踏みつけられている。
口と鼻から血が噴き出していた。
その隣でザムもまた、兵士に組み伏せられている。
両足が折れているようで、あらぬ方向に折れ曲がっていた。
遠くからドラゴンの咆哮が聞こえる。
ディーディーだ。
レイとザムが帝国軍に捕まったのに気が付いてディーディーが暴れ出したが、2人を人質に取られ拘束されようとしていた。
今な兵士がディーディーに鎖を巻きつけようとして苦戦している。
「くそっ。こいつらっ。」
レイを踏みつけている兵士が足に力を入れた。
レイとザムは陽動を続けていたが、ミナたちからの連絡が無く、撤退のタイミングを逃してしまった。
3日もすると万を超える帝国軍が北の町に集結し、反撃を開始する。
数で圧倒する帝国軍を前に、レイとザムはとうとう魔力も体力も尽き、大森林に押し寄せた軍勢により捕らえられてしまった。
「レイ。すまない。」
ザムが力なく言葉を発する。
「俺が巻き込まなければ。こんなことにならなかった。」
確かにザムの言う通りかもしれない。
ザムの言葉に耳を傾けず、魔族と戦う道を選んでいれば。
だが、この決断をしたのはレイ自身だ。
周りの忠告も聞かず、ザムと一緒に魔族領に行くことを決めたのはレイだ。
後悔が無いと言えばウソになるが、あのまま魔族と戦い続けていても後悔していたように思う。
レイはわずかに首を振り、ザムに応えた。
ザムはその姿を見ると顔を地面へと埋める。
レイに顔を見られたく無いのだろう。
「司令官、こいつらどうします?」
「ここで斬首する。首を持ち帰って皇帝に献上する。」
司令官の判断は的確かつ早かった。
レイとザムが帝国に攻撃した理由は不明だが、味方が近くにいるかもしれず、リスクを取らないことにしたようだ。
すぐさまレイとザムの体が近くの大きな岩の上に乗せられる。
ザムの姿を見たディーディーが大きく咆哮し、周囲の空気を震わせていた。
「すまない。すまない。」
力なく言い続けるザムをレイはちらりと見ると、そっと目を閉じた。
召喚されてから短い人生だった。
2年間、強くなり復讐を果たし、後悔はあるが充実した人生だったと思う。
帝国軍司令官は剣を抜き、レイの首めがけて一気に振り下ろした。
ガキンという重い音がして、振り下ろされた剣が止まる。
レイの耳に懐かしい、心地よい声が聞こえてきた。
「間に合って良かったです。」
トムはハルバードを一気に振り上げると司令官をはるか後方に弾き飛ばす。
森の北からは大勢の気合の入った叫び声が聞こえてきた。
「俺に続け!一気に攻めるぞ!」
ロックに率いられたレイの奴隷たちが、一気になだれ込んできた。




