13、一瞬の隙
凄まじい爆風が吹き荒れる。
兵士が何人か吹き飛ばされ、壁が一面ガラガラと崩れ落ちた。
「助けに来たよ!」
ミナの元気な声が聞こえてくる。
「師匠!俺は良いから早く…。」
ジャミが言い終わらないうちに、髪を鷲掴みにされた。
弟であるラガッシュ11世は、ジャミの首に短剣を押し付ける。
ミナが素早くムチを使い、短剣を叩き落とした。
痛みのあまり手を抑えるラガッシュ11世からジャミは逃げ出す。
ミナ・ライバと合流し、壁が崩れた皇帝の間から飛び出した。
「こちらです!」
ライバの案内で、長い廊下を走っていく。
角を曲がった所でようやく窓があるのを発見した。
ジャミが懐からスリングショットを取り出し、窓に向かって石のようなものを投げつける。
これは単なる石ではなく、アダマンタイト製の武具を作る時に余ったものを固めたものだ。
城の窓は跡形もなく粉々に割れた。
2人は割れた窓から外に飛び出す。
ライバは一足先に壁をすり抜け、外の敵を警戒している。
「こちらの方が警備が手薄です。」
ライバの手引きで2人は高速で走る。
瞬時に罠を見抜き、巧みに避けながら城を囲む防壁の所まで来た。
「エペトラ。」
ライバが2人の勢いを落とすまいと、防壁目掛けて特大の土魔法を放つ。
鋭い岩が防壁に突き刺さるが、全く壊れる気配がない。
「飛び越えるよ!」
「待って!」
飛び越えようとするミナをジャミが止めるが、ミナは既に乗り越えようとしていた。
一瞬の出来事だったが、ジャミとライバには永遠のようにも感じられた。
防壁から無数のアダマンタイトのトゲがミナの体を貫いた。
ミナの体が反り返り、目から光が急速に失われていく。
体中から血が噴き出し、手足の力が抜けているのが分かる。
「ミナ!」
涙を溜めたジャミがミナに近づくのをライバが止めた。
「ミナさんは私に任せて。逃げなさい!」
「でも…。」
「早く!」
周囲から足音が聞こえてくる。
兵士が集まってきているのだろう。
ジャミは地面を力強く蹴り上げると一気に跳躍した。
ミナと同じようにトゲに貫かれようとした時、タイミングを合わせたライバが風魔法でジャミを押し出す。
防壁の外に転がったジャミは、見上げてライバを見ようとした。
「目閉じて。」
ライバの声に目を瞑った瞬間、周囲に目が潰れるほどの光魔法が放たれる。
ライバはその隙に土魔法を使い、ミナの体をトゲから引き抜いている。
巨大な岩の手が、ミナの体を優しく包んでいる。
「早く手当…。」
涙声のジャミの提案に、ライバは首を横に振った。




