36.Aランクパーティー
この世界で冒険者になるのは簡単だが、ランクを上げるのは難しい。
Eランクから始まる冒険者のランクはE→D→Cと上がっていく。ランクを上げるにはEからDは村長または町長の、Cになるには小領主の、Bになるには大領主の、Aランクになるには王の推薦が必要だ。さらにその推薦に基づいて活躍を精査した冒険者ギルドの承認を得なければならないし、Dから一気にBにランクが上がるということもない。
昔はAランクよりも上に、複数の国からの推薦でなるSというランクもあったが、各国が緊張状態にある現在は、Aランクが実質的な最高ランクとなっている。
冒険者は強ければ良いというわけではなく、人格やどのくらい人類や国に貢献したかも評価される職業なのだ。
まさしくそのAランクパーティーであるロックウッドが、ライバ領での依頼を完了して、王都へ馬車を走らせている最中である。
ライバ領北東の迷いの森でオーガが複数体目撃され、村を形成される前に駆逐しようとライバ領主が直々にロックウッドに依頼した。
3か月以上に及ぶ討伐により大幅にオーガの数を減らし、ライバ領主からたっぷりの報酬をもらって帰途につく。
ロックウッドの面々は心地よい馬車の揺れにまどろみながら、決して眠るまいと会話を続けていた。
耳が人一倍大きく、ナイフを腰に差した小柄でショートカットの女が話をしている。
「ライバさんだったら1人でどうにか出来るでしょうに。」
その隣には男が座っている。眼鏡をかけ、細身の体を支えるように大きな杖を持っている。
「仕方ないでしょう。大領主が直々に討伐する訳にはいかないんだから。」
眼鏡の男のさらに隣には、トムよりも立派な体格の男が座っており、
「魔法でササっと倒すことは出来ると思いますが。」
耳の大きな女と向かい合うように座る、細身の杖を持つ青い髪の色白の女は、
「万が一があったら大変でしょう。息子のライルもまだ小さいし。」
色白の女の隣に座る金髪で額に傷がある男が話を引き取る。
「言うなよ。報酬たっぷりもらったし。贔屓にしてもらおうぜ。」
「確かに。」
「ライバとドインは受け得よね。金払い良いし。」
「ライバはともかく、ドインは勘弁してくれ。魔族との戦いなんざ命がいくつあっても足りねえ。」
「そりゃそうだがよ。」
取り留めもない会話を続けていた一行だが、突然ショートカットの女が耳をピクピクさせた。
「どうした。ミナ。」
ミナと呼ばれた女は、王都の方角に顔を向けながら耳を動かし続けている。
「何か変だよ。嫌な予感する。」
「そうか。皆警戒してくれ。サクソウとレシーアは魔力あるか。」
「ありますよ。今日魔法使っていませんし。」
「私もよ。ロック傷はどう?」
「おかげさまでバッチリ直ってるよ。ゴザ、いつでも前に出れるよう盾の準備をしてくれ。」
「おう。」
御者に声をかけ警戒しながら王都へと向かう。
そして王都の門前に着いた時、
「なんだよ、これ。」
Aランクパーティーロックウッドは、その異常な光景に唖然とするほか無かった。




