11、マイロの手紙
これを読んでいるということは、私は死んだか捕まったのでしょう。
これを読んでいるのはどなたでしょうか。
レイさんと親しい人が読んでいたら良いのですが。
レイさんにこの手紙のことを是非お伝えいただきたい。
本来ならば、レイさんに直接言うべきだったと思います。
ですが確証が無く、レイさんの側に常にいらっしゃったのでお伝え出来ませんでした。
今から15年ほど前でしょうか。
突然、先代の皇帝が魔法陣を通って遺跡に来たことがあります。
ガイライの様子を見に来たんでしょう。
その時息子を連れてきたのを覚えています。
浅黒い肌で灰色の髪の小さな子供でした。
皇帝である父親の後ろに隠れるように立っていて、こちらを見つめていました。
目が特徴的でね。
灰色の中にエメラルドのような緑の輝きがあるんです。
一度見たら忘れられませんし、そんな色の目の人を見たことがありませんで。
珍しいと思った記憶があります。
レイさんと初めて会った時、その男がレイさんの側にいて大変驚きました。
先代の皇帝の息子ということは、現皇帝のはずです。
ですが、レイさんと一緒にいた男は奴隷で盗賊だったと。
他人の空似かと思いましたがどうしても気になって。
現皇帝と直接会ったこともありませんし。
私も隔離された孤独な生活をしているわけじゃないんです。
伝手がありましてね。
調べてもらったら私の気のせいじゃなかった。
この手紙を読んでいる方へ。
是非レイさんにお伝えください。
レイさんの奴隷でジャミと名乗っている斥候崩れは、現ラガッシュ帝国の皇帝のはずです。
あの目の色を間違えるはずがありません。
レイさんは今、ラガッシュ帝国に行こうとしています。
私が「証拠がある。」と言ったばっかりに。
証拠はレイさんのすぐ側にいたんです。
一気に読んだポッタの顔が青くなった。
「レイさんに連絡しないと、早く。これが本当ならレイさんが危ない。」
通信袋でレイに連絡を取ろうとするが、全く繋がらない。
ザムにも繋がらず、とうとうポッタはロックに連絡した。
直ぐに応答したロックにホッとしたポッタだったが、
ロックから既にレイたちがラガッシュ帝国に向けて出発したことを聞き、頭を抱える。
「どうした、ポッタ。」
ポッタのからマイロの手紙の話しを聞き、ロックは舌打ちした。
「レイたちのことは俺に任せておけ。ポッタはポポルック族からもっと話聞けるか。」
「やってみます。」
ロックは通信袋を閉じると、タリカのいる砦へと急いだ。
皇帝の間へと連れてこられたジャミは兵士に頭を掴まれ、床へと押し付けられていた。
目の前の玉座に座る男への敵意を隠しもしない。
皇帝はゆったりとジャミの目の前まで歩いていくと、ジャミの頭を踏みつける。
ゆったりとした穏やかな口調で、皇帝はジャミに話しかけた。
「やあ、兄さん。久しぶりだね。」




