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復讐者  作者: 安慶
神への抵抗
352/421

5、拘束

 時は少しさかのぼり、レイが陽動作戦を始めようと大森林に身を潜めていた頃。

マイロはポポルック族の所に戻り、静かに暮らしていた。

心の中は平穏では無かった。

だがポポルック族に心配させまいと普段通りに振舞っていた。

「マイロドシタ。」

族長がマイロの顔を覗き込む。

マイロは思わず苦笑して「大丈夫です。」とポポルック語で返答した。

 いつも通り振舞ったつもりだが、族長には見破られたようだ。

心配させまいとしたつもりだったが、結局心配させてしまった。

マイロは少し反省しながら、いつも通り研究室へと向かう。

最近人間の死体が手に入らなくなった。

以前は定期的に遺跡で手に入れていた。

おそらく帝国軍が用意したものだろう。

だがガイライが死んだ今、レイを探しに来る物好きな冒険者以外ここには誰も来ない。

マイロが望んだ静かな時間が過ぎていく。


 マイロが研究室で物思いにふけっていると、族長の鋭い叫び声が聞こえた。

急いで研究室から飛び出していく。

絶対に会いたくなかった黒い鎧の集団が、ポポルック族の家を包囲していた。

1人の兵士が族長の首を掴んでいる。

族長は頭から血を流し、苦しそうにもがいていた。

「放せ!」

マイロはナイフを兵士目掛けて繰り出す。

だが、アダマンタイト製の鎧が軽々と弾き、ナイフは粉々に壊れてしまった。

「マイロ・ガルアンディールだな。」

兵士の言葉にマイルは止まった。

ガルアンディール、皇帝からもらった名前を言われるとは。

兄は喜んでいたが、マイロは呪われた名前だと、今まで誰にも名乗らなかった。

「だったら何だ。族長を放せ。」

兜に隠れて兵士の表情は見えないが、ニヤニヤ笑っているのが声から伝わってくる。

マイロは全身の血が沸き立つのを感じた。

「皇帝がお呼びだ。来い。」

マイロは兵士を睨みつける。

「族長を解放したらな。」

「断ったら。」

「私はここで死ぬ。」

2人はしばらく睨みあっていたが、兵士は舌打ちをすると族長を地面に叩きつけた。

マイロは悲鳴を上げて、族長に駆け寄る。

万が一の時のためにと持っていたポーションを族長に飲ませた。

「イクナマイロ。」

血が止まった族長がマイロの服を掴む。

「族長。今までありがとうございました。」

マイロは族長の震える手を両手で優しく包む。

そしておもむろに立ち上がると、「行こう。」と遺跡の方角に歩き出した。

「お前ら、絶対ポポルック族に手を出すな。後悔するぞ。」

「心配するな。汚ねえゴブリンなんざ近寄りたくもない。」

兵士たちはマイロを連れて遺跡へと向かう。

 地面に伏せた族長の元に心配したポポルック族が集まってきた。

族長の手には丸めた紙が握られていた。

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