4、視線の先
「始まったね。」
ミナが興奮気味に呟いた。
ミナたちがいる場所のはるか東の空に、光魔法が広がっている。
離れた場所にいるのに眩しい。
もし近くで浴びせられたら、目が潰れるかもしれない。
「行こ。」
「うん。」
3人は周囲に人がいないことを確認して森から飛び出し、道なき道を南に向かって走る。
周りには町はおろか村さえも無い荒れ地が広がる場所だ。
時々ここで帝国軍が演習をするくらいで、人も魔物もいない。
荒れ地の中を身を低くしながら走る。
あと4時間ほど走ると小さな町が見えてくるはずだ。
町には入らず、少し進んだところにある林の中で野宿をする予定である。
この辺りは魔族領に近いが、西側を高い山々が遮っているからか魔物が少ない。
魔物を狩ろうとする人も少なく、城までは小さな町が3つあるだけなので見つかる危険が少ない。
ここまではマイロからもらった情報の通りだ。
3人は人に見つかることも無く順調に南下している。
この作戦が始まってからジャミが静かだ。
ミナは並んで走るジャミに話しかける。
「なんかテンション低くない?」
「そんなことない。」
ジャミは否定するが、いつもと様子が違うのは明らかだ。
いつもならボヤキながらミナの後を付いてくる。
「緊張してんの?」
「うん。」
ジャミが緊張するのは珍しい。
だが…とミナは考える。
緊張とは少し違う張り詰めた空気がジャミの周囲に漂う。
ライバも心配そうにジャミを見つめている。
ミナはジャミの態度に戸惑いながら、任務を遂行するために前を向き荒れ地を走り抜けていった。




