28、役割
「で、行くとして誰を連れて行くんだ?」
ロックが現実的なことを言う。
「俺とザム、ザムっていうのがアトラントの息子で魔族だ。あとライバとジャミだな。」
レイはジャミの方をちらっと見た。
危険な目に遭いそうなとき、ジャミは必ずぼやく。
だが予想に反して、ジャミは何も言わない。
「ジャミ、何も言わないな。」
「行くよ。逃げ回るの嫌だし。決着つけないとね。」
ジャミも覚悟を決めたようだ。
「それでは私はギルガ神聖国に行きます。」
穏やかな顔でそう言ったのはサクソウだ。
「ダメだよ。危険すぎる。」
「何故?私は神に仕える身。ですが、その神が何をしようとしているのか知る必要があります。」
「でも。」
「レイさんの話が本当なら、ギルガ神聖国にも何らかの証拠があるでしょう。」
「レイ、サクソウを止めようとしても無駄だぞ。」
ロックが口を挟む。
「こいつは頑固だからな。何がなんでも行くだろう。」
「はい。大勢では目立つので1人で行きます。」
レイはショウダイたちを見る。
ショウダイたちはレイを見て頷いた。
「レイさんやサクソウさんたちにだけ危険な目には遭わせません。俺たちも行きます。」
サクソウは戸惑っていたが、ユウナがショウダイの話を引き継ぐ。
「私たちも神聖国だったら土地勘あるし。でもバレても迷惑がかからないようにサクソウさんとは別行動で動くね。」
「捕まるなよ。絶対に。」
レイが念押しする。
「じゃあ、私はジャミに付いてくね。」
ミナが勢いよく椅子から立ち上がった。
「師匠~。」
ジャミが甘えた声を出す。
「レイさんたちは行かない方が良いかも。罠とかあるし。斥候2人とどこでも通れるライバさんで行った方が良いね。」
ミナの言葉にレイは焦る。
「それだと俺とザムは。」
「まあ、私とジャミが安全に入れるようにしてほしいかな。」
「陽動をってことだな。」
ロックがミナの狙いに気が付く。
「そう。指名手配されてる咎人が帝国内に現れたら、兵士たちはそっち行くと思う。」
「手薄になった所を狙うのか。」
「うん。レイ、城の地図と仕掛けの位置のやつは貸して。」
「分かった。他の紙に書き写すからちょっと待ってくれ。」
「じゃあ、俺とゴザとレシーアは反乱の準備だな。」
ロックがニヤリと笑う。
「ロック!」
「睨むなよ、レイ。サクソウもミナもお出かけで俺たち暇なんだ。何かさせろ。」
「じゃじゃあ、俺の奴隷たちの訓練とか、戦いの準備もろもろ。」
「うっし。腕が鳴るな。」
レイたちだけで行動しようとしていたが、思いがけずロックウッドを巻き込むことになってしまった。
動揺するレイに、珍しくゴザが笑いかける。
「皆恩があるんだ、レイに。レイがいなかったら俺たちはとっくに死んでた。」
「そうね、ゴザは腕治してもらったし。」
レシーアも微笑む。
レイやロックウッドの面々を見ていたタリカは、ロック以上の悪い笑いをしていた。
「美しい友情を育んでいるとこ悪いが、これから面白いことが起こるぞ。もうすぐ俺の仕掛けが発動する頃だな。」
レイはその悪い顔を見て、この人を敵に回さなくて良かったとつくづく思った。




