26、証拠
「レイさん、聞こえますか?」
何かトホス王国で起こったのかもしれない。
レイは焦った声で返事をした。
「ポッタさん、何かあったんですか。」
「あっいえ、大したことは。レイさんに会って話をしたいという人が来まして。どうするかと。」
レイは考える。
セイクルズの拠点で留守番をしているゴゴズは通信袋を持っている。
そうするとトホス王国に来たのは、賞金首のレイを狙った冒険者かもしれない。
レイが黙ったままでいると、ポッタは話を続けた。
「マイロさんという男性の方です。」
「すぐ追い出してください!」
レイが思わず叫んだ。
向こうでガサゴソを音がして、言い争う声が聞こえてくる。
ポッタが必死に説得をしているようだ。
通信袋からゴサっという音がした後、マイロの声が聞こえてきた。
「レイさんですか。」
「話すことは何もない。」
レイは通信袋を閉じようとする。
「待ってください。大事なお話があります。証拠についてです!」
「証拠?」
袋を閉じようとしたレイの手が止まる。
「話せ。」
レイの短い命令にマイロが一気に話す。
「お話してないことがあって。兄は記録魔でしてね。帝国に研究資料を保管している場所があるんです。」
「それを信じろと。帝国といまだ繋がっているお前を。」
「決して繋がってません。誓って。私はポポルック族と平穏な暮らしをしたいだけです。」
「で。」
「レイさんが指名手配されてるって聞きました。」
「なぜそれを知ってる。」
「ポポルック族の住処まで冒険者が来たんです。あちこち荒らされました。レイを出せと。で指名手配されてること知ったんです。」
「そうか。」
嘘はついていないようだ。
念には念を入れてとタリカの方を見る。
タリカは嘘をついていないようだとジェスチャーをした。
レイの態度が和らいだと思ったマイロは話を続ける。
「レイさんの潔白を証明するにはその証拠を出すしかありません。いくらギルガ神聖国といえど、証拠を無視することは出来ないでしょう。ラガッシュ帝国がやってきたことが明るみに出来ます。」
「で、それを探すとしてお前に何のメリットがある?」
「先ほども言いました。ポポルック族と平穏な暮らしがしたいんです。冒険者が来て荒らしたり、帝国に私を探されては困る。」
「…その場所はどこにあるんだ。」
「城の中、地下にあります。」
「無理じゃねえか。」
皇帝の住む城に忍び込み、地下室から資料を持ち出すのは不可能に近い。
「帝国内の地図をお渡しします。それと城内の地図と仕掛けのある場所も。かなり昔の私の記憶頼りなんで違ったり変わってる所はあると思いますが。」
レイはタリカを見た。
タリカが力強く頷く。
『乗れ』という意味だ。
「分かった。送ってくれるか。」
「分かりました。ポッタさんの袋を使います。」
通信を切りしばらく待つと、今度は転移袋が光る。
ポッタが送った荷物が届いたのだ。
レイが袋に手を突っ込むと、マイロが作ったであろう地図が3枚出てきた。
詳細な所まで描かれた地図と、小さい字で城内の仕掛けなどなどが書かれた注意事項がある。
「次の行動が決まったのか。」
ロックが言うが、かなりリスクが高い。
迷っているレイを見て、タリカが陽気に言った。
「じゃあ、レイは資料を探しに行くとして。こっちはこっちで反乱起こすか。」




