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復讐者  作者: 安慶
魔族の真実
341/421

25、師匠と弟子

 レイは魔法袋から手紙を取り出すとジャイルに渡した。

「これ、アトラント様から。」

レイの言葉にジャイルの眉がつり上がる。

ジャイルは剣聖アトラントに幼少期剣術を習っていた。

彼の洗練された剣の腕は、アトラントから教わって身についたものだ。

ジャイルは「嘘」という言葉をグッと飲み込む。

「アトラント様はご健在か。」

「はい、というか、いいえ、というか。魔族になってしまいましたが、今でも魔族領に住んでます。お子さんもいます。」

「そうか。」

 ジャイルはそう呟くとゆっくりと封を開け、それほどページの無い手紙を何回も読み返していた。

読み返しているうちに、目にうっすらと涙が浮かんでくる。

ジャイルは時間をかけて読み終えると何回も瞬きした。

泣いていることを隠したかったのだろう。

「確かに。アトラント様の手紙だ。アトラント様と私しか知らない事が書かれている。レイ殿が先ほど話した内容も書かれていた。」

ジャイルは丁寧に手紙を封筒にしまうと、手近にあった椅子に座った。

「本当なんだな。魔族のこと。アトラント様が魔族になってしまわれたこと。」

レイが頷くと、ジャイルは顔を覆った。

「神が。何故。」

自分の信仰心と現実との狭間で苦悩しているのが分かる。

レイはジャイルにおずおずともう1つ、アトラントから預かったものを渡す。

アトラントの指にはめられていた指輪で、ジャイルに渡してほしいと言われていた。

「ああ。これはまさしく。」

呻くように言うと、ジャイルは両手で指輪を包み込むように持ち黙ってしまった。

しばらくして立ち上がると、部屋から出ていく。

 レイは戸惑った表情でタリカを見た。

タリカは静かに口を開く。

「そっとしておこう。こっちはこっちで今後のことを話さなきゃいけない。」

レイはジャイルが座っていた椅子に座る。

ロックウッドやジャミも、思い思いに座ってタリカが口を開くのを待つ。

 レイが座って待っていると、腰に付けた通信袋が光っているのに気が付いた。

レイが通信袋を掴んで魔力を流すと、ポッタの小さい声が聞こえてきた。

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