表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐者  作者: 安慶
魔族の真実
340/421

24、共感性羞恥

 レイの顔に剣を向けたジャイルが、剣を振り上げた。

レイは抜剣しようとしたが、今持っている剣がミスリル製ということを思い出し躊躇する。

アダマンタイト製の剣に勝てるわけがないからだ。

切られると思ったレイは目を瞑ってしまう。

だが体に痛みが走るわけでもなく、血が流れるわけでもない。

恐る恐るレイが目を開けると、ジャイルが明後日の方向に剣を振り回していた。

「くっ、強い。さすが魔族を倒しただけはある。」

何故か棒読みで見えない誰かと戦っている。

「こっこんなに強いなんて。誰か、誰か助けてくれ。」

ジャイルが少しずつ後退している。

後ろに何もないことを確認するためか、ちらちらと後ろを何回か見ている。

そんなジャイルの様子を見ていたレイは、段々恥ずかしくなってきた。

「うっ。うわあああ。負けたあああ。」

ジャイルが叫びながらゆっくりと床に倒れた時、レイの恥ずかしさは最高潮に達した。

「王国最強の男が負けるとは。くそっ。俺たちはここまでなのか。」

抑揚をつけて俺上手いだろと言わんばかりのタリカのセリフが、更に恥ずかしさを増幅させる。

「要求は何だ。貴様あ。」

タリカが立ち上がりレイを指さす。

「えーとですね。事情を説明しに来ました。」

とりあえず話を進めることにする。

「ふっふん。聞いてやる。」

タリカがドカっと椅子に座ったため、レイは魔族と帝国の話を簡潔に話した。

タリカは先ほどと異なり真剣な表情で聞いている。

レイの説明が終わった時、タリカは強い口調で話し始めた。

「お前、俺をバカにしてるのか。」

「してません。」

「何か隠してるだろ。言え。」

 タリカが持っている真贋のスキルは、かなりの精度のようだ。

ラガッシュ帝国とギルガ神聖国が繋がっていることをレイは隠していたが、タリカには気が付かれている。

全てを話さないといけないらしい。

レイはチラっとサクソウを見た。

サクソウは何かを察したのか、レイを見て力強く頷く。

何を聞いても受け止めるという、彼なりの決意だ。

レイはタリカの方を向くと、2国の関係と、ギルガ神聖国が召喚した勇者を殺して魔族を作ろうとしていたこと、それが神の意思であることを話した。

 その場の誰も言葉を発さなかった。

しばらくの静寂の後、最初に口を開いたのはアッカだった。

「それが神の意思だとしたら、レイはやはり咎人ということになるね。」

アッカの言葉は非情だが的を射ている。

 この世界は神によって統治されている。

神の意思に反するということは、すなわち罪を犯すということだ。

「そんなのおかしいよ。」

ミナが小さい声で抗議する。

「どんなに残酷でも、どんなに理不尽でも、神の意思に背くことは出来ない。」

「でも。でも。」

ミナの華奢な手が震えている。

罪のない人間を殺して魔石を埋め込む。

子供までも犠牲になっている。

心優しいミナにはそれが耐えられなかった。

 レイは黙ったまま考え込んでいるタリカやアッカを見つめていた。

相手は神と2つの大国だ。

さすがの2人もすぐに解決策が見つからないようだ。

レイは見回しながら、ジャイルに目を止めた。

そして何かを思い出すと、魔法袋の中に手を突っ込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ